第46話 魔界統一トーナメント戦・続
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『蓮見島(はすみとう)』
「ここが、蓮見島?」
ワープで飛ばされた栄子と数名の治療スタッフ。
治療所から少し離れた魔方陣がある草原に彼女達はいた。
清清しい夜風に乗ってくるのは微かな甘い香り。
きらきらと光る雫と揺れる花達。
この甘い香りはこの花の香りだろうか。
足早に治療所に向かう。
しかし…
外から見ても人が溢れた様子もなく
とても静かだ。
少し離れた所にある一般の治療所の前にも人一人いなく、辺りは静まり返っている。
おかしい?
明かりはついているものの、人の気配がしない。
共に来た三名のスタッフはその異様な雰囲気に栄子にその場に待つように言うと、それぞれが治療所に走って行く。
嫌な予感がする。
風に乗ってくる甘い花の香り…
そして、同時に香ってきたそれ…
これは-…
火薬??
バァァン!!!!!
「!!?」
響く爆発音-…
森から鳥達が激しく鳴きながら飛び立って行く-…
瞬間、つんとする血の香りが鼻を掠める。
まさか-…
足が震える。
あの時の記憶が蘇る…
自分の目の前で吹き飛んだ彼ら達…
「うそ、だー…」
今のは治療メンバーが向かった方角からだった。
「栄子様!!!!」
その声にハッとすると声のしたほうから走ってくるのは、一緒に来た治療メンバーの一人の女性。
「あ…」
「大丈夫でしたか!!?一人やられました!!それに…治療所内には死体しかありません。栄子様戻りましょう!!!」
「死体…?」
「えぇ、一体はゾンビ化しておりました。このエリアの治療班リーダーです。」
それは先程ルナと話していたリーダーの事だろうか。
「飛行部隊のスタッフ達もやられています。このエリアの異常を早く本部に伝えないと!!!」
そう言い腕を引く。
だが…
「待って!!あと一人は!!?」
後一人はまだあそこにいるのではないだろうか。
「その者もすでにやられております!!さぁ、早く!!!」
強く腕を引かれそのまま連れて行かれる。
しかし…
「ね、ねぇ、どこいくの!!!」
ワープ場所である魔方陣から離れて行く。
本部に伝えるのではなかったのか。
これでは逆方向だ。
それでも彼女は強引に腕を引いて行く。
暗闇を走る。
林の中に入ればそれでもまだ何かから逃げるように走って行く。
「ど、どこまでいくの!!?」
おかしい。
何かおかしい。
そして気付く。
彼女の引く手が異様に冷たい事に。
月が彼女の引く手を照らす-…
それは細く棒の様な-…骨、だ。
一気に悪寒が走り栄子はそれを振り払う。
「栄子様!!?」
「あ、あなたー…それ…」
青ざめる栄子。
背筋が凍るように寒い…
見れば見るほどそれは暗闇の中でもはっきりと姿を現す。
細い骨だけの手に腕-…
そして、彼女の顔を見れば先程見たスタッフとは違う顔-…。
どこかで会ったような見たことのある顔。
「だめじゃないですか、手を離しちゃ…さぁ、もうすぐですから…」
「こ、こないで…」
後ろに後ずさる。
「このエリアではもう誰も生きていません。さぁ、早く。」
手を出し栄子に歩み寄ると同時に後ずさる。
誰も生きていない?
そんなわけはない。
だって-…
「…こないでよ。」
「さぁ、栄子様-…私と共に…」
「勝手に殺すな。」
低い声が振る。
それと同時に目の前の彼女の体に幾つもの線状の光が駆け巡り、次の瞬間それは地面にぐしゃりと音を立て崩れ落ちる。
「…すまんな。栄子。…許せ。」
空から声と共に降りてくるのは見知った姿。
目の前の光景に青ざめ口元を押さえる栄子の姿を見れば、罰が悪そうに苦笑する。
「躯…さん。」
そう、このエリアには彼女がいた。
安心からか、力が抜けぺたんとその場に座り込む栄子。
「おまえの霊気を感じたから探してたんだ。どうしてここに来た。」
「ここの治療班のリーダーから連絡があって、人が足りないって…聞いて。」
「人が足りない?…なるほど。それでおまえが来たから後は用無しとなったと、言うわけだな。」
「え?」
「治療所は今火の海だぜ?」
目を見開く、そんなはずはない。
「…うそ、あったわよ。さっき。」
「俺がお前を追いかけてきたときにはあそこ一体火の海だったぜ?」
「…!!!」
「あれでは全滅だな。俺の部下が少なかったとはいえ…残念だ。」
そう言い目を伏せる彼女。
「嘘…。」
背筋が凍り手足が震える。
私が来たから?
火薬の香りは知っている…あの男だ。
そして…
それは…
「さっきの女も仲間だろう。殺した事は咎めるな、やらなきゃお前がやられてた。」
「……。」
「トーナメントをめちゃくちゃにしてくれる。ルール違反もいいところだ。」
「…躯、さん。」
力なく見上げる栄子。
その頭を撫でながらも苦笑する。
「心配するな、日が昇れば本部の奴らも来るだろう。魔方陣まで壊されちゃ帰る事もできんからな。」
「!!?」
「この島から出す気がないんだよ。おまえのストーカーはな。」
そう口角を上げる彼女。
「私…私、どうして-…、あの男は一体…」
不安が体中を駆け巡る。
「まだ、分からんのか?」
撫でる手が止まり、ゆっくりと顔を覗き込まれる。
「分かっているのだろう?」
『許さない…』
そうだ…あれは…
『名を呼べ…栄子。』
あの男は-…
「ひで…ただ?」
彼女の瞳を見つめ自分でも驚くほど掠れた声でそう呟く。
「…正解、だ。」
瞬間体がすばやく宙に浮き、地面から舞い上げる激風に驚き瞳を閉じる。
「痛めつけるくらいはいいだろう?」
そう低く彼女の声が頭の上から聞こえ見上げれば月に照らされる彼女の横顔が目に入る。
その向こうで大きく姿を現す月に違和感を感じ、周りを見回す栄子は息を飲んだ。
見渡す限り続く暗い空に大きな月が神々しく自身を強調し、その下では敷き詰められた緑達が光を受け輝く。
躯に抱えられ居る場所は大きく育った魔界の
木の上。
器用にその頂点に立つ彼女とジャンプ力に凄い!!と感激するものの、どうも彼女にその言葉は耳に入っていないようだ。
彼女の視線の先に一つの影。
長い黒髪が風に靡き、黒尽くめに身を包んだ-…あの男。
空に浮かぶその男に、栄子は目を見開く。
『栄子…』
声が頭の中で懐かしい声が響く-…
『思い出す…俺と会ったことで…』
少し低い粘着質な…男の声-…