第46話 魔界統一トーナメント戦・続
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仕事にも精が出る。
睡眠不足は常にあるものの、それでも仕事はこの世界で確実に自分の存在意義の様なものになってきている。
この魔界統一トーナメントだけの間。
終われば人間界に帰る。
それでも…何かしていないと落ち着かない。
許しを請う苦しい夢は悪夢にも似る。
ずっとこれはあり続ける。
日も暮れた深夜。
派遣先のエリアでは治療所に数人の怪我人が運ばれてくる。
それでもこちら側はやはり少ない。
に反して一般治療所を見れば、ただならぬ人数だ。
「くそ…もう少しだったのに。」
そう顔を顰めながら治療院のタンカーで運ばれるカバ面のガンタンさん。
「躯さまに怒られるぅ…」
魘されながら運ばれてくる金髪の天使のクライプさん。
(うん、名前はなんとなく覚えているな。)
室内では、患者の傷口に手をかざし傷を治していく栄子の姿。
「次回がんばりましょうね。…名前なんでしたっけ?」
ベットに横たわる彼は眉を寄せふてぶてしそうに睨む。
「…わざと言ってるのか?」
「すみません。嘘です、奇琳さん。」
ふふふと笑い彼の腹の傷を塞いでいく。
致命傷とまでは言わないが、この傷での勝負は無茶だと踏んだのだろう。
確かに血を流しすぎているようで顔色が悪いようだ。
このエリアで彼が試合をしていたという事は、以前躯は誰の観戦に行っていたのだろうか。
「前回は打倒躯さんだったんですって?」
「……なにが言いたい。」
「いいえ、一日でやられてるなぁって思って。」
「…だんだん躯様に似てきたな。」
この前の仕返しか?と怪訝そうに眉を寄せ言う彼に悪戯そうに笑う栄子。
とその時だった。
「どういう事ですか!?」
ルナの声が治療所で響く。
見ればモニター越しで話す彼女の姿。
モニターに映るのは別のエリアで栄子達と同じように治療所でスタッフをしている一人の映像だ。
「とりあえずこちらから数名送ります。それまで持ちますか!!?」
切羽詰った様子。
彼女の声の様子から何か焦っているという事はわかる。
「…どうしたんですか?」
モニターが切れると、リーダーの側に行く栄子。
後ろでは奇琳が「ちゃんと治してから行け!!」と叫ぶが、元気そうなので心配ない。
「あ、栄子様。すみません、少し問題が発生しまして。…別エリアで患者の数が多くて治療班のメンバーでは追いつかないと連絡がありまして。」
「…足りない?」
そんな事があるのだろうか。
言ってみればこちらのエリアはいまだ十数名程しか治療所に来ていない。
「はい、患者が多すぎて追いつかない、と。」
「えぇ!!」
「とにかく誰かを送らないと…」
なにが起こっているのか。
追いつかないとは意味が分からない。
躯の戦士達は77名、他にも躯に仕えている者達は数知れず多勢ではあるだろうが、それなりに皆力を持った強者のはず。
一気にそのエリアに固まったとか?
ありえない。
そうだとしても治療所にそんな多勢が来るだろうか…。
「…わ、私!!私行きます!!」
思わず手を上げるとまたまた後ろで奇琳の怒り声。
せっかく修行したこの力。
お菓子を食べてゆっくりもいいが、結局は先程も一般の治療所を手伝いにいっていた栄子。
状況がいまいちわからないものの、困っているのは確かだ。
前回は沢山の人に迷惑をかけ、罪滅ぼしと言うには重いが、どこかで挽回の機会を狙っていた栄子。
「栄子様が?」
「うんうん、行くわ。私!!」
最近まで忘れていた事…
こうして人と接して行く内に思い出したことも確かにある。
「私、接客業だったの。」
「接客業?」
「人と接する仕事よ?困ってる人がいるなら私が行って助けてくる!!」
「……。」
「だ、だめ?」
無言のルナに一瞬怯むが、彼女は一息つくと栄子の心情を悟ったのか微かに微笑み頷いた。