第45話 巡る命
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淀んだ空に亀裂が走る。
森の奥にある墓石の前で佇む一人の男。
男は翡翠の瞳を揺らしただそれを見つめる。
墓石など作った事など無かった。
死人は死人…自然の理であり死ねば土に返り植物の養分となりまた誰かの血肉となっていく、ただそれだけの植物連鎖の一端だと、少なからず昔の彼はそう思っていた。
墓石を作ったのはあの時、彼女と出会ったからだ。
それまでは死人を埋めることはあっても墓石を作り弔ったことなどなかった。
男はその場にしゃがみ込めば墓石に生えた苔を手で取り払う。
掠れていてもそこに浮かんでくるのは自分が心から信頼し共に戦ってきた仲間の名。
『黒鵺』
手を合わせ瞳を閉じる。
右腕であり親友だった彼。
栄子が自分の目の前からいなくなってしばらく、黒鵺が罠にかかり死んでしまった。
共にいたにも関わらず助けられなかった自分。
逃げろと言ってくれた黒鵺。
弱い者は魔界では死ぬ…罠に掛かればそれがその者の運命。
それはわかっていた…。
一人帰った先で、部下に話せば誰一人自分を責めるものはいなかった。
単独行動は確実に仕事をこなす者のみが行えるものだった。
雲海はただ唇を噛締め涙を堪えていた。
他の部下も同様、酷く悲しんでいたのを今でも覚えている。
不思議だった…
昔の自分なら何も感じなかったのに…
誰か俺を責めろ…
心を抉る傷は一つで十分だったのに。
「お前達には本当に参ったよ。」
不可欠な者を作ると後で後悔する。
だからこそ、酷く怯えた。
墓石をなぞれば、そのまま手を合わせ瞳を瞑る。
ただ、想いを込めて…