第4話 色香
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栄子が帰った後…。
ガラス戸のカーテンを開ける秀一。
「お待たせしました。飛影。」
ベランダには、黒く逆立った髪の毛に、つり目の小柄な男の姿があった。
すでに日は暮れ外は暗くなっていた。
「まったく帰ろうかと思ったぜ。貴様の女遊びに付き合ってられんしな。」
そう言いながら、飛影と呼ばれた男は呆れたように毒を吐きながら部屋に入る。
「女遊び…ってちょっと二人でじゃれてただけですよ?」
「貴様が一方的に楽しそうだったが??」
珍しいこともあるもんだな、と飛影は思うが口にはしない。
「で、どうしたんです?今日は…怪我はしてなさそうですし…」
首を傾げる秀一に飛影は封筒を渡す。
「…これは…」
「煙鬼からだ。魔界統一トーナメント第二回の案内状だ。」
「もうそんな時期か…」
秀一は懐かしそうに目を細める。
「出場者は自由だが、前回上位にいた者は半強制らしい。おまえもその一人として上がっている。」
「……。」
「無理にとはいわん。嫌ならそう言っといてやる。」
秀一の表情を見て心情を読む飛影。
「いや…そういうわけじゃない。」
「どうせ、人間になって捨てられない物がふえてきたんだろ。…また母親か?」
「母さんは心配ない。再婚もしたし俺はもう独立してもいい時だから。」
なら、なぜ?
飛影は開こうとした口を閉じる。
「貴様…」
飛影は目を細める。
秀一の揺れる瞳がベランダに向く。
ベランダの向こうの窓…。
「正気か?」
秀一はくすりと笑う。
「まさか。一緒には生きられない。」
「……。」
秀一は目を瞑る。
遠い昔の出来事。
恋焦がれて自分をも見失う想い。
歪んだ愛情。
「…人間などに本気になるなよ。生き急ぐだけだぜ。」
そう言いながら自嘲気味に鼻で笑う飛影を見て秀一は悟る。
「……あなたは…」
「…昔の話だ。」
少し切なそうに彼は目を伏せる。
「……。」
「遊びならかまわんがな。」
飛影はやめておけと目で語る。
「あぁ…わかっている。」
封印しなければいけない。
魔界に行ってしまえばすぐには帰れない。
いい機会だ。
何百年と風化しない想いを知ってしまった狐にはささいな抵抗にしかならないだろうけど。
それでも…。
抵抗しなければいけない。