第44話 重ならぬ想い2
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「あの…馬鹿め。」
会場のモニターを見ながら呆れた様に呟く躯。そして、その後ろで顔面蒼白になる奇琳。
巨大パネルに映るのは蔵馬と栄子の姿。
たった今飛影は勝ちを得て去ったものの、今だ空中スタッフは物珍しい光景を撮影している。
蔵馬が栄子の額に口付けを落とし、それに照れる栄子の姿。
「あの狐わざとだな。」
躯はふんっと鼻で笑い用意されたソファに深く腰掛ける。
「躯様…」
「なんだ?顔色が悪いが…おまえの試合はまだ先だろうが、体調は整えておけよ?」
こんな時までなぜ冗談を言う余裕があるのか。
自分のお気に入りだと彼女を紹介し、その上躯治療班のメンバーに迎えたにも関わらず、この暴走ぶり。
主の顔に平然と泥を塗る女。
しかもこんな公共の面前で、だ。
奇琳はがっくりと肩を落とす。
そんな彼を見て躯は面白そうに笑う。
「…仕置きでも必要か。」
「えぇ、えぇ、そうです!!ここまで行けば客人所か、ただの厄病神です。処罰は厳しくいくべきです!!」
狐が棄権した時点で同じことはもう起きまいと、躯も分かっていた。
だけどだ…
「だが、処罰は与えねば…俺の顔がたたん。」
さも面白そうに言う躯。
「そうですとも!!」
「しばらく仕事休ませるか?」
「…他には?」
「毎日俺と食事を共にする。」
「……。(ご自分で罰って…)…他には?」
「俺の暇潰しに付き合わせる。」
「躯様、真剣に答えてください。(確かに罰といえば罰か…。)」
「俺はいつでも真剣だが。」
ふふふと笑う主に本日何度目か分からないため息が出る奇琳。
「あ…もっと良いこと思いついたぜ?」
「…いえ、もう聞きたくありません。」
どうせろくでもないことだろう。
そして、主のこの様子からして栄子に本当に罰を与えることはないのだろう。
泥を塗ったなど彼女が気にするわけもなく、そんな主だからこそ器の大きさも知れない。
「…見ろ、奇琳。狐と栄子がいちゃつきだしたぜ?」
ひゅうっと口笛を吹く主に目の前の部下は深く肩を落としたとは言うまでもない。
「く、蔵馬…は、離れて…。」
(やっぱり二人とも同一人物だ。というか…やっぱり蔵馬…だ。)
治療が終わればいつの間にか後ろにきた蔵馬に抱きしめられていた栄子。
「…なぜだ?」
耳元で囁く彼にくらくらしてくる。
秀一よりもなぜか色香の濃い蔵馬。
腰にしっかり腕を回され抱きしめられて逃げられない。
しかし、硬直し言葉を投げ掛けた栄子に対して少しばかり腕の力が緩んだのは気のせいではない。
「…俺が恐いか?」
「へ?」
思わぬ言葉に思わずきょとんとし、すこしばかり顔を逸らし彼の顔を見る。
綺麗な透き通るような白い頬。
金色の切れ長の瞳…そして絹糸の様な長い銀髪。
(やばい…やっぱくらくらする。)
改めてみるとその色香にやられそうになってしまう。
そういった意味では恐ろしいが…
「秀一の方がいいのか?」
「な、なんで?」
「その姿の方が安心するのだろう、おまえは。」
間違っているわけではない。
確かにそうではあるのだが…
だがそれは生まれた時からずっと側に居た安心感からというものだ。
でも中身は…
「…同じ、なのに?」
「おまえが言うのか、それを。」
首をかしげ意味の分からないといった風の栄子に苦笑する蔵馬。
なにが言いたいのだろうか。
いまいち蔵馬の言葉の意図が分からない栄子、それを見て蔵馬はあきらめたのか一旦息をつき、まぁいいと再び彼女の体を自身に寄せる。
「きゃっ…ちょ、だから近いって!!てか離してください…」
思わず敬語になるのは大人になって改めて感じるこの色気に警戒しているからだろうか。
鼻血出る…と思わず鼻を押さえる栄子。
「冷たい事を言う。昔はあんなにも懐いてくれていたのに。さみしいやつだ。」
さらに引き寄せられ首筋に狐の冷たい唇があたる。
「っ…く、蔵馬!!!」
この男一体何をしているのか。
思わず触れた首筋を手で隠す。
「おまえのために棄権したんだ。これ位、許せ。」
手を掴み髪を搔きあげればざらりとした熱い湿ったものが首筋を這う。
「なっ…ここ、ここ外!!!蔵馬さん!!ここ外ですから!!!」
「お前が聞いてきたんだろ?」
「な、何の事ですかって…どこ、どこさわって…」
気付けば手が服の下に差し込まれて行く。
「俺の欲しいものが気になるといった。」
「~~~~!!!!!」
「場所を変えるか。さすがにこれ以上見られるのは俺も気が引ける。」
耳元で甘く囁く狐の言葉にぎょっとし周りを見回せば、空を見上げる栄子の視線が止まる。
そして、真っ赤な顔がみるみると青くなっていく。
空中スタッフが手に持つカメラ。
気付いたスタッフが栄子に手を振れば栄子も振り返す。
が、次の瞬間…
激しく頬を叩く音と栄子の叫び声が響いたとは言うまでもない。