第44話 重ならぬ想い2
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薄暗い室内。
真っ赤に染まったシーツの上では無残に引き裂かれ死んでいる女性の遺体が目に入る。
この所業を行った人物は今は出かけていて夜までは戻らない。
これで一体何人目になるのだろうか。
ベットの前で静かにそれを見下ろすのは一人の女性、桃華。
見慣れてしまったそれでも顔を歪めてしまうのは仕方がない。
元々こういった現場を目の辺りにする事はない世界で平和に暮らしていたのだから。
白い肌に鮮血。
未だピクピクと指が動いているさっきまで確かに生きていた女。
自分にこれっぽっちも似ていない、彼が連れてきた若い女。
先程まで彼とここで繋がり甘い声を発し、彼を求めていた女の声が今でも脳裏に残る。
気まぐれに彼は贄になる女の体を性の捌け口にすることも少なくない。
以前は自分が彼のそれの役目を果たしてきた。
見下ろす彼の瞳が自分を通して他の誰かを見ているのは分かっていた。
それでも彼が求めてくれるのならば、それだけで満足だったのだ。
「どうして…」
ぽそりと出る掠れた声。
目の前で死んでいる女にすら憎しみが沸く。
最近、彼が自分に触れることが極端に少なくなった。
以前はあんなにも欲を自分にぶつけてきたというのにだ。
飽きられたのだろうか…。
それでも側に置いてくれるのは、名を呼んでくれるのはなぜか。
自分の命を弄んだ事への償い等彼が思うはずもなく、きっとこれもただの気まぐれなのだろう。
…特別だとは思わない。
生かされているだけで特別などと思った事はない。
特別なあの女が心から羨ましい。
心から妬ましい。
あの女に手をかければ彼は躊躇なく自分を殺すとわかっている。
殺したいくらい憎くても、彼のあの女に対する想いが自分の前で剥き出しになる場面など見たくもない。
なぜ私を生きかえしたの?
きまぐれにしては残酷すぎる。
あなたの手で生かしたならば、あなたがあの女の元へいく前にどうか殺してちょうだい。
頬に流れるのは一筋の涙。
残酷な人だと分かっているのに…
このしがらみから抜け出す術が私にはわからない…