第43話 重ならぬ思い
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落ちて行く赤い夕日が草木の合間を縫う。
生暖かい風が緊張を乗せる。
その風に乗りながらか、鋭くも隙のない剣が風を切り、一方ではそれを交わし植物の鞭で弾いて行く。
瞬時の動きに夕日はそれらの影を作ることもままならず、ただ余韻を微かに残すのみ。
形が見えずとも響くのは剣がぶつかる音と破壊音。
「貴様、ふざけてるのか…。」
激しい攻防を繰り返す中、飛影は忌々しそうに呟く。
「俺が?真剣ですけど。」
「……。」
ぎりぎりで剣をかわして行く秀一に飛影は眉を顰める。
余裕なのかそれとも振りなのか、未だにこの狐の真意は見出せない。
上から振り下ろした剣を瞬時に持ち直し足を踏み出せば下から秀一の腹目掛けて切りつける。
瞬間体制を崩すも利き足で踏ん張り即座に飛び退く秀一。
着地と共に地面に手を付き翡翠の瞳がするどく飛影を見据える。
ぱっくりと腹の部分が割れた狐の衣装。
それを見て薄く微笑む飛影。
「次は切るぜ?」
「…へぇ。」
それでも秀一は瞳を細め口角を上げる。
まるでやってみろよ…とでも言いたげなその妖艶な笑みに飛影の赤い瞳が細くなり複雑な色をのせ微かに揺れる。
静かに風が二人の間を吹く。
「…本気にならんと知らんぞ。」
ぽそりと呟く低い飛影の声。
瞬間-…
一気に距離を詰めた赤い瞳が秀一を射抜く。
そして瞬時に構えた姿に狐は目を開いた。
「黒龍派!!!!」
「!!?」
至近距離で放たれた黒龍。
黒龍の叫び声が大きく木霊し、地面を焼き食らいながら魔界の炎に身を包む暴動な龍。
それは一気に秀一の体を飲み込もうと襲い掛かる。
「おもしろい…。そうそう見れないぞ、しっかり見ておけ、修羅。」
空に浮かぶ浮遊虫の上に立つ黄泉と修羅。
人物制限されている空中観戦、彼らは許容人物に入っているようだ。
「速攻黒龍打つとか、蔵馬殺す気じゃん。」
うわっと顔を歪ます修羅に隣で薄く笑う黄泉。
「…そうする必要があるのだろう。」
殺す気でいかなければ変わるまい。
そして、それ位では死なないと飛影も分かっているのだろう。
「…俺ならじわじわいくけどな。楽しみたいし。苛めたいし。」
「……。おまえ蔵馬と戦うのは嫌じゃなったのか?」
「え、嫌だよ、嫌に決まってんじゃん。苛めたりなんかしたら倍にして返されそうだし。」
あいつとは戦いたくないって言ってるじゃん!!例え話だよ…とケラケラと笑う。
そんな様子の息子を見て黄泉はやれやれと微笑む。
「でも、死んじゃったんじゃないかな、蔵馬のやつ。一気に気配消えたけど…。」
見下ろしながら左右に視線を配る修羅。
地が震えるほどの鳴き声に、全てを焼き尽くしながら駆け巡り空高くに蠢く黒龍…
すでに狐は龍の腹の中か、さては炎に焼かれ散ってしまったのだろうか。
「さぁな。」
「……。」
戦友で昔からの友人の事は心配にならないのだろうか。
「これくらいで死ぬのならばあいつの覚悟もそれ位のものだ…。」
「??」
さらに意味が分からなく首を傾げる修羅だったが、ひとつ分かる事は父親が彼を信用しているという事だ。
それがどこかうらやましくなる少年。
自分には信じられる仲間はいない…
認められたいと思う人は目の前の男だけで、自分が認めたのも彼、黄泉だけだ。
父親であり最大のライバルでもある黄泉。
しかし、彼が一目置く幽助と拳を交じえば何かかわるのかもしれない。
「俺も早く戦いたいな…。」
だからこそ早く戦いたい。
そんな修羅の思考を読み取ったのか黄泉は隣で自分の息子を見て薄く笑うのだった。