第4話 色香
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栄子の番。
「秀ちゃん、目を瞑ってて!」
「はいはい。」
秀一は楽しそうに笑う。
そんな楽しそうな彼に栄子は少しだけ悔しくなる。
確かに秀一は素敵で女性もほっとかない、だけど自分は幼なじみだ。
昔から知っているし抱きついた事もある。
なのに不覚にもあれだけ動揺させられたのだ。
正直悔しい。
栄子は心に決める。
秀ちゃんを、絶対あたふたさせてやる!
彼女は闘争心を静かに燃やした。
「秀ちゃん…私の事、どう思ってる?」
早速、猫なで声を使ってみる栄子。
すでに戦いの幕は上がっている。
「ねぇってばぁ…」
彼の耳元で囁く。
さっきまでは気が付かなかったが、秀一の髪からは薔薇の良い香りがする。
彼は香水などつけない。
これは彼自身の香りなのだろうか。
それなら高校時代に「薔薇のきみ」と言われるだけの事はあるな、と栄子は納得する。
秀一はただ目を瞑っていて、動揺する気配など微塵もない。
…あきらめないぞ。
栄子は耳に息を吹きかけてみる。
本来の目的も趣旨も、何もかもずれてきてる事に彼女は気づかない。
ただ、彼を動揺させたい。それだけだ。
秀一はかゆそうに耳を掻く。
どうしたら動揺するんだろう…びっくりする事してやろうかなぁ…
栄子はニヤリと笑う。
もし他人が栄子を見ていたらきっと彼女に悪魔の耳と尻尾が生えたように見えるかもしれない。
普段絶対しない事。
今だから出来る事
カプッ
彼の耳にかぶりつく。
すると一瞬ビクッと反応したものの、それだけでまた元に戻る。
伝わる息づかいも乱れない、平常心そのままだ。
ちょっと舐めてみる。
さすがにくすぐったそうに肩をすくめるが、まだまだ普通。
動揺どころか相手にされていない気がし、余計に腹が立ってきた栄子は少しやけになる。
頬にチュッとキス。
変わらず微笑んだまま。
…悔しい…。
最後の手段、栄子は秀一の髪をかきあげると首筋に唇を這わした。
「ん…」
初めて漏らした声に栄子は心の中でガッツポーズ。
やった!声出た!
栄子は調子に乗り、次は舐めてやろうとさらに彼の髪の毛を掻き揚げた。
「やりすぎ」
呆れた声と同時に、顔を押され引き剥がされる。
「栄子の方がよっぽどエッチだよ。今の色気の出し方と関係ないだろ。」
秀一はやれやれと言った感じで栄子を見る。
「…う。…だっ、だって他のやり方思いつかなかったんだもの…」
後もう少し位いいじゃない…栄子は思う。
秀一の首筋の肌はとても滑らかだった。
少し余韻の残る自分の唇に触れる。
「あんな事冗談でも誰かにしたらだめだ、確実に泣くよ。」
いつもより少し冷たい声。その声に反応する様に栄子は秀一を見上げる。
秀一は少し苛ついているようだった。
感情をあまり表に出さない彼ではあるが、長年一緒にいた彼女には些細な苛立ちさえも分かる。
しかし、なんで怒るのかが栄子には理解出来なかった。
意味が分からず彼女はしゅんと肩を竦める。
そんな栄子を見て秀一は何を思ったのか、ぽんっと手を叩く。
そしてニッコリと笑う。
「俺が今のを栄子にしてあげるよ。どんな気持ちか分かるから。」
機嫌が治ったのか少し明るい声で言い出す秀一に、栄子は思わず頷きそうになった頭を止めた。
「えっ…無理無理。」
頭を振り、顔面蒼白になる。
あんな事されたら…
栄子は想像するだけで鼻血が出そうになる。
「栄子は良くてなんで俺はだめなの?」
じりじりと黒い笑顔で楽しそうに寄って来る秀一に、栄子は彼に悪魔の耳と尻尾が見えたような気がした。