第42話 予選の合間2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「栄子、おまえの上司は誰だ?」
「今は…躯さんですが。」
それは仕事中の事。
その日、躯班の治療所は珍しく忙しかった。
そんな時に仕事場にやってきた、今の雇い(?)主。
運ばれてきた選手たちの治療に専念するスタッフ達と栄子。
がらがらとひく台車の音。
怪我の具合は選手それぞれで、意識不明の重体の妖怪もいれば大した怪我でもないのに痛いと呻く軽傷の選手。
さすがにその選手は躯の姿を見つけるなり青ざめ黙ったとはいうまでもない。
「…今は何時だ?」
「今は昼過ぎですね。」
何時と聞かれても、こちらと忙しい。
患者に両手をかざし治癒しながらも後ろの壁にもたれ腕を組む彼女に言葉を返す。
「…俺の命令を忘れたか?」
不機嫌そうな低い声。
それでも今は仕事中の為、彼女のご機嫌取りに付き合ってはいられない。
「躯さん。今、私は仕事中です。暇だったら別ですけど、今は忙しいんです。お茶はまた今度にしてください。」
見てわかるでしょ?と付け足してみる。
お茶と人の生死に関わる事なら迷わず後者を取るだろう。
機嫌が悪くなる意味が分からない。
「暇あれば一般に出向くくせによく言うぜ。」
「仕事ですから。」
「仕事もやりすぎるなと言った筈だ。休みの日まで無駄に霊力つかいやがって、あげく俺のベットまで占領しやがる。」
「……。」
「仕事したいなら、俺の命令は最優先だと、この前言ったよな、昨日も徹夜だったと聞いたぜ?…栄子ちゃん?」
栄子の疲労振りを見て躯が言った命令。
躯の言う事は聞くこと。
躯とのお茶の時間をとる事。
「そんなの、私だけが楽するなんてできません。」
皆一生懸命働いているのにだ。
さすがに仕事を取り上げられるのは困る為、その場は彼女の提案に乗ってみたものの実際はそう簡単に出来ることではない。
それに、ほう…と目を細め意地悪そうに微笑む躯。
「第一、この治療所での上司はルナさんで-…」
瞬間背後から首筋を撫でられる感触に背筋がぞくりとし跳ね上がる。
「き…」
「おっと、仕事したいんだろ。安心しろ、邪魔しない。」
叫びそうな栄子の耳元に囁かれる悪戯な躯の声と、首筋に置かれた冷たい手の感触に一気に血の気が減っていく。
「き、気が散ります!!」
「これ位で気が散るとは修行不足じゃないのか?それともまだ疲れているんじゃないか?ん?」
楽しそうに耳元で囁く躯の甘い声に、青かった顔が徐々に赤みを増して行く。
「なぁ、ルナ。そうだろう?」
「…そう、ですね。」
声の向けられた先で苦笑するルナの姿。
栄子は思う。
自分に向けられた彼女の瞳が哀れそうに見えたのはきっと見間違いではなかったと。
「さぁ、リーダーの許可を得たぜ。お茶でもするか、栄子ちゃん。」
「~~~~~~~!!!!!」
忌々しそうに振り返り悪戯主の顔を睨むものの、おまえの怒った顔も嫌いじゃないぜ?と顔を近づけるものだから、焦って押し返したとは言うまでもない。
「躯さんのエロエロ魔人!!!」
「これ位でそんな事言われたらこの先どうするんだ?」
「さ、先!!!?」
仰天する栄子にそれをさも面白そうにからかう躯をルナだけでなく、その他スタッフ達は苦笑いしながら見ていたとは言うまでもない。