第40話 第二回魔界統一トーナメント戦開幕
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「…こんな所で寝るとは…いい身分だな。」
それは日が沈みかけ薄く暗くなる時刻。
聞きなれた声に、ゆっくりと瞳を開けると大きなモニターの隣では呆れた様に目を細め腕を組む躯の姿が目に入る。
昼食後、秀一の試合を見ようとモニターが設置されている躯の部屋に足を運んだ栄子。
その頃、この部屋の主は部下の予選試合を観戦のため不在だった。
主催者側の彼女は好きなエリアを自由に空中観戦できるらしい。
こちらも試合を観戦させてもらおうとモニターのリモコンを操作するもどうもうまく使えない。
躯の敷地内はすべてこのモニターで見ることが出来る。
以前、躯が簡単に使っていたので自分にもできるだろうとたかをくくっていたのだが…どうもうまく扱える事が出来なく断念…どうしようか、そう思っていた矢先彼女のベッドに不意に横になると襲う睡魔。
そして…今に至る。
「躯…さん?」
もう終わったのだろうか?
目を擦りながら起き上がりベットの上に座る栄子は、未だはっきりしない頭で目の前の彼女を見上げる。
「そんなに俺が恋しかったか?可愛い奴だ。」
さっきまで呆れていた躯の様子とは一変し、面白そうに口角を上げ近づく彼女に、栄子は一気に目が覚める。
「わっ!!ご、ごめんなさい…そんなつもりじゃって…きゃぁ!!ち、近いです、躯さん!!」
思わずベットの端に逃げる栄子を楽しそうに見下ろす躯。
「お、起き立ての心臓に悪いです!!」
楽しそうに笑う彼女に、また遊ばれたと思いつつも、ふと思考が戻る。
そういえば…
「飛影どうだったんですか?」
彼女が観戦に行ったのは飛影のはずだ。
そう思っていたのだが-…
「飛影?…あぁ、勝ったんじゃないか?」
と興味なさそうに返すものだから、一体誰の試合を観戦に行っていたのかと聞くと、彼女は楽しそうに微笑み「まるで浮気を詮索する嫁みたいだな?」と、妖しく瞳を細めるのでそれ以上は聞かないでいた。
きっと奇琳あたりだろう。
そう納得してみる。
これ以上聞くと面倒な事になりかねない。
「躯さんの試合はまだ先でしたね?」
「あぁ、血が疼いて困る。」
部下の試合を見てきたからだろうか。
不敵に笑みを浮かべる躯は、いつもの彼女より妖艶で危険な香りがする。
それに思わずごくりと唾を飲み込んでしまうのは改めて彼女が妖怪なのだと思い出したからだ。
初めて彼女と会った頃と似ている感覚。
慣れたといえどやはり種族は違うのだ。
「予選頑張ってくださいね。」
それでも彼女の勝利を願う。
口を開けば自然に出る言葉に、偽りも怖れもない。
「あぁ。」
それに満足そうに返事をすると、何やら思い出したようにベットに腰掛け、笑みを浮かべながら身を近づける。
そして-…
「…先駆けの褒美とは、おまえも隅に置けんな。」
と、気付けば腕を引かれ距離を詰める躯。
大胆な奴だな…と、瞳を妖しく光らせる彼女に身の危険を感じ思考が飛びそうになったとはいうまでもない。
妖怪だから危険なわけではなかった。
*********
「そういえば…秀ちゃんは!!?」
涙目になりながらも、やっと終わった習慣(躯の遊び)に思考が戻る。
いつものように散々からかわれ、気が済んだ躯は満足そうにソファにもたれ片手にコーヒーを持ったまま、カーテンの後ろに隠れる栄子に視線を移す。
「なんとか勝ったみたいだぜ?」
いいかげん出て来いよ。と目を細め口角を上げる彼女に未だにビビる栄子。
「…な、なんとか?って?」
それでも思いも寄らない言葉に、カーテンから這い出す。
修羅の言葉もあり余裕に近い試合だと思っていたから尚更だ。
「なんとかは、なんとか、だ。」
「っ…。」
「心配するな、今治療中だ。」
その言葉に改めて彼が怪我をしたのだと悟る。
瞬間背筋まで寒くなる。
「秀ちゃんが、怪我…。」
「……。」
呟き青くなる栄子を見据える躯の瞳。
怪我の理由は明確。
試合を見ていない栄子は分かるはずもないだろうが、秀一は人間の姿のまま試合に応じたのだ。
中には強い妖怪も居る。
妖狐の姿になればもっと楽に勝てたものをなぜわざわざ…
そう思っていた躯だったが、自室に戻った瞬間理解した。
リモコンを持ったまま眠る栄子の姿…。
「対した怪我じゃない。安心しろ。」
元々、狐を観戦しに行ったわけではないものの多少の興味を引かれていたのは事実。
「でも…」
「おまえ、これ位で動揺してたら後がもたんぞ?」
「う…はい。」
それでもそわそわする栄子に、躯はため息を付き、さっさといってこい…と呆れながら言えば、顔を上げ「ごめんなさい!!」と、早速出て行く彼女。
よほど心配なのか…
それにしても…
「…甘い狐、だ。」
あの日の夜、使い魔から聞いたのはほんの一部。
だが、なんとなく状況の予想はついていた。
彼女は鼻で笑い、コーヒーに口をつけようとするが、それが止まる。
部屋の暗闇の中、薄っすらと現れる人影。
それが主の名を呼ぶ。
躯の瞳が細く鋭く変わる。
口を開く影に、躯の低い声が室内に響く-…
「すぐに調べろ。」
そして気配の消えるそれに、躯は目を伏せ息を付くと、彼女はソファに身を沈めた。
「主催者側って面倒だ。」
そうぽそりと呟いて。