第4話 色香
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「秀ちゃん!一生のおねがいがあるの!」
日曜日の昼下がり、扉が激しく開くと同時に聞き慣れた声が秀一の部屋に響いた。
久々に週末に休みの取れた栄子は彼の部屋の入り口で両手を合わせていた。
秀一は、読みかけの本をテーブルに置くと、またなんかあったの?と優しく笑い彼女を部屋へ入れる。
栄子はいつものようにベッドに座ると、ソファに座る秀一の翡翠の瞳をじっと真剣な眼差しで見つめる。
「…なに?」
何も話さない彼女に秀一は、また何かあったのだろうか、と心配になり眉を潜める。
「秀ちゃん…」
ぽそりと呟く栄子。
「なんか、あった…のか?」
秀一が栄子の頭を撫でようと手を伸ばすが、いきなり頭が下がる。
「色気の出し方教えてください!」
ベッドの上で土下座をする栄子。
彼女の頭上をさ迷う秀一の右手。
「…色気?」
「そう!色気!秀ちゃん男なのに色気があるし、どうしたらそんな風に色っぽくなれるか教えてほしいの!」
顔を上げて必死にお願いをする栄子。
「あと、男から見てどんな女性の仕草がどうとか、魅力的だとかそういうのも教えてほしいの!」
「そういうのは女性に教えてもらったらいいんじゃないか?中原さんとか。」
「先輩はだめ!怖いし、厳しいもの!!」
「……。」
そんなに気にしているなら厳しくていいんじゃないか?と思わず突っ込みたくなる秀一。
「…やっぱり、だめ?」
捨てられた犬の様に潤んだ瞳で秀一を見る。
「またなんで?…誰か好きな奴でも出来たの?」
栄子は首を振る。
「違うの。…私、考えたんだけど、私に足りないものって一杯あるんだけど…一つは色気だと思うの。今は恋愛どうのってわけじゃないんだけど…」
「……。」
「やっぱり、悔しいの。あんな思いはもうしたくないの。」
あの失恋は栄子にとってとてもショックなものだった。
悔しくないはずがない。
浮気相手だったとしても自分は捨てられたのだ。
それだけの魅力がなかったのだ。
あんな思いは二度としたくない。
考えに考えた栄子。
唯一自分で分かる足りないものの一つが『色気』だった。
秀一は深くため息をつく。
「…自分を責めたらだめだよ。栄子にはちゃんと魅力があるし、相手にそれがわからなかっただけ。それだけだよ。」
「…色気もある?」
唇を尖らせじっと秀一を見る。
「…俺は、あると思うけど。」
「周りにはないって言われるよ?」
「…。」
だから気にしてるのか、と秀一は苦笑する。
「…わかったよ、色気なんて教えた事ないけど。…やってみようか。」
栄子は目を見開き『きゃぁーだから秀ちゃん好き!』と嬉しそうに抱きつく。
秀一はやれやれと小さく息を吐きながら、確かにこんな行動はかわいいとは思うけど、色気はないのかもしれないな、と納得した。