第38話 弱味
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橙のランプの明かりがゆらゆらと揺れる。
ソファに沈む栄子の唇に重ねられた狐の唇は優しく触れ、軽く啄ばみながらも深さを増していく。
いきなりの状況の変化に着いていけず意味が分からなかった栄子だったが、その口付けの熱に次第に我に返って行く。
眩暈と息苦しさの双方を感じ理解できない痺れが体を駆け巡る。
その感覚に我慢できず顔を逸らすものの、顎を固定され向きなおされると再び熱いものが口内にねじ込まれる。
眉を寄せ顔を顰める、抗議の声を上げようとするものの、何度もそれで塞がれる。
「く、…くら…苦しっ…」
やっとの思いで開放されたそれは酸素を取り入れようと荒く息を繰り替えす。
栄子の視界に入るのは息の掛かる距離で自分を見下ろす熱を帯びた妖艶に細まる金の瞳。
狐は薄く笑い自身の唇をぺろりと舐めると再び栄子の唇に熱を持ち落ちていく。
彼にとっては息継ぎの時間を与えたつもりなのだろうか。
未だに自分を求める彼の行動についていけず、体が強張る。
首筋に這う彼のざらついた舌に体の奥が熱を持ち、震える。
彼の胸を押し返すと、その手を掴みそれに優しく口付け、口に指を含む。
「や…」
妖艶に細まる金が栄子の瞳を捕える。
指から感じるその舌の感触と熱さに、感じたことも無い感覚がぞくぞくと背筋を這い上がり動悸がする。
「お、お願い…や、やめて!!!」
真っ赤になり叫ぶものの、逆効果だ。
バスローブの下から入る太ももを滑る手にびくりと反応する栄子は嫌々と首を振る。
慣れた手つきで滑る手に、口に含まれる指に体に全神経があるかのよう反応する。
こんな自分は知らない。
それに、これは蔵馬で秀一なのだ…
恥ずかしすぎる…
「お願い…蔵馬、やめて。話を、聞いて…。」
恥ずかしさと意味の分からない感覚に涙が流れる。
心はついていけない…
まだ何も私は彼らに返事をしていない
楽な選択を突きつけられただけだ…
目を開けば金の瞳に見抜かれる。
「これが終わったら聞いてやる。」
終わる?
それは…何?
彼の口内に含まれた指が口付けと共に開放さる。
開放されたのは指だけではない、彼の唇だ…
流れるように銀の髪が首筋に滑り肌をくすぐると、鎖骨に落ちてくる唇の熱さに驚き身がすくむ。
そして、肌に感じる空気に、滑り込む手に気付いた頃には遅かった。
長い指がバスローブの紐をいとも簡単に解き前を開いていく。
肌に触れるリアルな感触と空気の冷たさに身が震える。
「や…っ」
羞恥と意味の分からない怖さで涙が溢れる。
「栄子…」
熱っぽく名を囁き唇に落ちる熱い蔵馬の唇。
肌を滑る手に体がそれでも反応し、自分では聞いた事のない声がもれるもののそれを優しく狐が塞ぐ。
肌を滑る手が胸の膨らみに触れる。
「や、やだ!!!」
思わず起き上がろうとする栄子の腕を掴む狐。
「あきらめろ、栄子。」
欲する金の瞳がただ自分を見据え
「どれだけおまえを想っているか教えてやる。」
そう耳元で甘く妖艶に囁かれる。
「!!?」
再び振る口付けは勢いを増し彼女の口内を犯す。
まるで拒絶するのを許さないとばかりに降り注ぐ甘くも激しい口付け。
(怖い…怖い!!!)
「秀ちゃん!!秀ちゃん!!!」
腕を捕まれながらも、顔を逸らし身を引き叫ぶ。
「秀一は俺だ。呼んでも同じだ、栄子。」
そう言い彼女の両腕を掴み引き寄せる。
「違う!!…秀ちゃん、出てきて!!秀ちゃんっ!!」
横に首を振り涙が散る。
コロコロと落ちる氷泪石…
「…栄子…」
身を捩り逃げようとする栄子の腕を掴んだまま狐は目を見開く。
「……やだ、秀ちゃん。」
狐の前で恐怖で怯え俯いたまま震える体。
首筋についた狐所有の痣…
だが、それでもこの愛しい娘は自分のものではない。
腕を掴む彼の手が緩む。
狐は眉を寄せ目を伏せる。
開放されると彼女はソファの片隅に逃げ身を固め震える。
「…栄子…」
切なげにそれでいて哀しげに微笑む傷ついた蔵馬の金の色。
それに何も答えずただ涙を流す栄子に、狐は少し頭を垂れた。
「…蔵馬…」
「…おかしいものだ。」
自分に嫉妬するなど…
自嘲気味に笑う彼の体が光る。