第35話 愛情の形
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目覚めた栄子の視界に天井から吊り下げられたシャンデリアが目に入る。
窓から差し込む月明かりが反射して所々きらきらと光る。
枕にしみこむ涙。
床に転がる氷泪石も形をなくし溶けていく。
両手で顔を覆えば、再び流れる涙に嗚咽。
誰かに助けを求める事などできないのに…
背負うべき罪だと分かっているのに…
出る言葉は決まってる…
「秀ちゃん…」
沢山迷惑をかけた
もうこれ以上は甘えられないと分かっている
彼と距離が空いたあの時…私はあんなにも彼に甘えないと決意したのに…
なのに…
苦しいときに呼ぶのは決まって彼だった
「苦しいよ、秀ちゃん…」
どうしていいのか分からない
でも呼ぶだけで楽になるの…
そう、それは昔から…
『大丈夫だよ、栄子。』
そう言って、頭を優しく撫でてくれた。
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そういえば…
いつものように自分自身を落ち着かせると、思い出したように起き上がる。
開け放された窓。
風で揺れ動くカーテン。
「躯…さん?」
まだ目に残る涙をごしごしと拭き、周りを見回す。
いない彼女に不安が襲う。
勝手に寝てしまった自分に呆れ別の部屋へ移動したのだろうか?
彼女は一国の主だ、そんな彼女のベットを占領し追い出すなど死刑者だ。
驥尾にばれたら何を言われるかしれない。
しかしだ…
再びベランダに視線を向ける。
出て行くにしてもドアではなくベランダを選ぶ必要があるのか。
それとも誰かが入ってきたのか…
(飛影…?まさかね。)
丸見えのベランダ。
外に出たのだろうか…こんな夜中に。
微かに風に乗って部屋に入ってくるのは、どこか懐かしい香り。
『狐を…』
『愛していたのだろう?』
先ほどの夢が蘇る。
心臓が鳴る。
心の奥で警報が鳴る
考えるな、と…
べランダに出て下に広がる庭を見ると遠くに影がひとつ。
この庭はとても広い為、その姿を見つけられただけで奇跡に近い。
誰かと話しているのか…
彼女が向く方向は木の影で隠れ見えない。
とりあえず、側まで行こうと城の中を通り一階まで行き庭に出る。
手入れの行き届いた庭。
所々に花壇があり、美しい花が咲き乱れている。
夜にしか咲かない花は月の光を浴び、様々な色を纏い見るものを魅了する。
しかし、それに近づいてはいけない、これは獲物を引き寄せるための美しさ、側に寄れば花の花粉で眠らされ、自分は養分とされる。
以前、不法侵入してきた妖怪がこれに捕まり、次の日には姿形がなかった事を栄子は覚えている。
他にもさまざまな花があるが、大抵は曰くつきの花達だ。
あまり花壇には近づかず知る影を探し歩く。
なぜ、部屋で待たないのか…
なぜ、彼女の影を探したのか…
懐かしい香りにただつられた、それだけ。
ふと見えた見慣れた後姿。
月に照らされ見えるそれに安堵のため息を付く。
雲が流れる…
ゆっくりと月の光が彼女の先を照らし出す。
見えたそこに…
栄子はただ息を飲んだ。