第35話 愛情の形
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深夜、寝苦しそうに眉を寄せる栄子を隣で見つめる躯の姿がそこにあった。
彼女は隣で横になり、頬杖を付きながら栄子を見下ろす。
胸元の布団を握り締め、苦しそうに顔を歪ませる栄子。
「っ…ごめんな…さい…」
出る言葉は苦痛に似た声。
分かっている、これは救えないのだと…
躯は瞳を細め彼女の頬に手を当てる。
自分の体温に少しでも安らぎを感じてくれたらいいと、少しでも苦痛が減ればいいのに、と祈りながら。
触れた手の甲を涙の石が滑り落ちていく。
「秀…ちゃ…」
「……。」
溶けた涙を指で拭う。
微かに出た人物の名から、徐々に規則正しくなっていく寝息。
落ち着いていく表情…。
それを静かに見下ろす躯。
空いてる躯の片手がゆっくりと彼女の顔に伸び、彼女の睫毛が微かに揺れる。
ベランダのカーテンが揺れる。
ビリッ!!
瞬間電気の様な火花の様な閃光が躯の手に走り、すばやく戻す。
ピリピリとしびれる指。
見れば皮膚が裂け血が滲んでいる。
「…周到な奴だ。」
白く小さく光る彼女の指元が目に入る。
以前、躯が渡した指輪。
指輪の石から微かに感じるのは狐の妖気。
傷ついた指をぺろりと舐めると、視線をベランダに移す。
「俺のやったものまで使うな…狐よ。」
風で揺れるカーテン。
さっきまで閉まっていた窓は全開に開け放たれ、生暖かい風が肌を霞める。
気だるそうに起き上がる躯の頬をかすめる微かな痛み。
躯の瞳が細く妖しく光る。
後方の壁に突き刺さる植物の茎、彼女の頬には線状の赤い傷…
彼女の視線の先にはベランダに立つ男の姿。
銀髪が風になびき、金色の双方は冷ややかにこちらを見つめる。
「…妖狐・蔵馬、か。その姿になっても相変わらずの過保護なんだな。」
面白そうに上がる躯の口角。
最近そういえば血を見ていないな…と、楽しそうに呟く躯に、蔵馬は微かに眉を寄せる。
「…死にたいか?躯。」
狐の口から出るのは凍るような冷たい声。
「それは俺のセリフだが…挑発にしてはやりすぎの様に思うぜ?」
再度、指を舐め瞳を光らせる。
躯は視線だけを狐に向けたまま顎で外を差した。