第3話 現の夢
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それから半年後。
ある宿屋の亭主に植物で出来た蔦の武器らしき物を喉元に押し当てる狐。
「やめて!!殺さないで!!」
乱れた着物を手で直しながら栄子は狐に訴える。
部屋の花瓶は畳の上で割れ、障子は破れている。先ほどここで何が起きていたか…
栄子の助けを求める声は筒抜けだったはず。
なのに、誰一人として助けに来なかった。
耳の良い狐だからこそ間に合ったが…。
どうやらここは亭主には逆らえない暗黙のルールがあるらしい。
狐は凍る様な冷たい目で男を見据えた。
「お願い!やめて!」
栄子は狐の腕にしがみつく。
ガタガタと震える彼女の体はまだ未熟で小鹿の様に細い。
成長したとはいえまだ子供。
それに安心していた為の、この失体。
「だめだ、こいつは殺す。じっくりとな。」
ぐっと蔓の先に力を入れると男の喉元から血が流れる。
男は恐怖で声が出ないのか、汗を流しながら、狐の腕を掴む女の子に助けを求めるかの様に目を向ける。
それが狐の気分を一気に害した。
血しぶきが上がる。
「栄子、俺と共にいろ。従えば俺がおまえを守ってやる。…できぬなら…わかるな?」
狐は栄子に優しく、しかし強制するかの様に語りかける。
彼女は狐に手を引かれたまま、夕暮れの街を歩く。
栄子は何も言わない。
自分のせいでまた死んでしまった亡骸を思い出す。
「…どうして?」
ぽそりと呟き、ふと歩みを止める栄子に狐は疲れたか?と顔を覗き込む。
「…私が離れたら殺すのではなかったの?」
初めと違う約束。
当初、食べる為に連れ去ったはずが、生かした。
次は逃げれば殺すと狐は言った。
狐はどうしたいのだろうか…。
「俺は気まぐれだ。今回俺の元から離れたのは目を瞑る。」
「……。」
優しく残酷な狐。
自分の周り全てを奪い、自由を無くす。
逃げては追いかけられる。
狐はだんだんと狂っていく。
少し成長した栄子は感じる。
ここにいては行けない。
「殺さぬ。」
狐が苦しげな切ない声で栄子を抱きしめる。
栄子を見て揺れる金色の艶やかな瞳。
「だから、逃げるな」
逃げれば周りが死ぬ。
それは呪縛。