第35話 愛情の形
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それはいつもの穏やか?な躯との夕食後の事。
躯の部屋ではいつもの様に紅茶を飲みながら談笑をするものの、その日の栄子は早々と睡魔に襲われかけていた。
「今日は泊まっていけ。」
眠そうに目をこする栄子に躯はコーヒーを飲みながら苦笑する。
それに首を振り帰ります…と呟きながらも栄子の瞳は落ちていく。
どうやら最近の寝不足が原因らしい。
夢見があまり良くない上に日によっては夜中に目覚める。
いいかげんしっかり眠らさなければ…
躯は息を付きながらも彼女をベットへ導き寝させる。
口では帰りますと何度も言う栄子だが、体はとても正直だ。
「こんな所で寝たら…躯さんに、むにゃむにゃ…食べられる…」
すでに寝言の域に入っているのか、片言の様に呟く栄子に躯はお望みとあれば…と笑うが、返答は思った通り、ない。
すうすうと寝息を立て始める彼女。
躯は時計を見上げ、子供は寝る時間だな…と納得する。
真っ暗な意識の中、どこからか爆発音と悲痛な女性の悲鳴聞こえる。
『た、助けて!!い、いやぁぁぁ!!!」
苦痛に似た叫び声。
お願い、やめて…
『お願い、殺さないで、や…やめて…あぁぁぁぁ!!!!」
怯えた後に待っていた絶望。
胸が痛い…
これはなに??
これは…
『許さない…』
背筋が凍るような冷たい声。
また…
ここに来てしまった…の?
『許せない…』
その声を私は知っている。
ごめんなさい…
ごめんなさい…
謝るしかできないのは、その人がもういない人だから…
罪の意識は夢を見る度に濃くなり、忘れていた事を責めるかのように脳裏を抉る。
平和な時にほだされ薄くなっていた時期さえ本来なら許されない事なのだったのに。
…決して忘れてはいけなかった。
『なぜ…私を忘れるのだ?』
ごめんなさい…
でも今は覚えているわ。
『なぜ、狐と共にいたのだ?』
…狐?
『そうだ、狐だ。…おまえはあいつを愛していたのだろう?』
愛して…いた?
瞬間耳に響くのは別の声色…。
『…栄子-…』
甘くも低い彼の声…。
振り返れば銀髪の髪を靡かせ、金色の瞳を細め優しく微笑む彼の姿。
蔵馬…。
『栄子…』
優しく頬を撫でる。
…なぜ、いつも現れるの?
『愛している…』
なぜ、夢の中まで出てくるの?
あなたの事を思ってはいけないのに…
懺悔をしなければ、いけないのに…
『愛している…栄子』
そして、その声は徐々に歪み出す。
『栄子…忘れるな…』
彼の声から粘着質な声に変わっていく…
私はこの声を知っている…
『おまえは忘れてはいけない。』
『名を…呼べ…』
私は知っている…
この人の本当の声を…
『名を呼べ…栄子。』
切なげに耳に入る二重に聞こえるそれは酷く哀しい声。