第34話 妖精の湖
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ベットの上では仰向けになりながらも、指にはまる指輪をじっと見つめる栄子の姿があった。
白透明な小さな石がはめられたシルバーリング…
シンプルな手に取りやすかったそれは元々躯へのプレゼントとしてきた割にはいやに手軽な品だ。
貢ぎものとしてきたとは思えないくらい、栄子にとって馴染む品だった。
※※※※※※※※※※
『それは天然の白華石(はっかせき)と申します。それはそう高価な宝石ではありませんが、その透き通るような淡く白い色味に清潔感があり今、女性に人気な品です。』
指輪を眺めていた栄子にそう教えてくれた驥尾。
一国の国の主とも言える、躯へのプレゼントにしては少々役不足ではないかと尋ねると、驥尾はそうですね、と苦笑する。
『実は、その石…天然の物は魔石にも成長します。成長石の名は白華皇(はっかこう)と呼ばれ持つものに存在感を与えます。ただ、白華石が白華皇まで成長するのは約100年の時を要します。なので、本来なら白華皇を躯様に送るのが当たり前かと…。』
きっと知識の薄い近隣国の馬鹿が間違えたんでしょう…と笑う。
『……。』
百年先など生きているわけもない。
これが天然のものだったとしても自分は成長したこの石を見る事はできない。
そう思うとどうも興味が薄れていく。
『でも、栄子様。白華石自体は魔石になる為、存在力を養いたいため身に着けた者の存在感を奪います。』
『え…えぇ!!』
驚愕の驥尾の一言に、慌てて外そうとする栄子。
『大丈夫です、付けている間だけです。そうして白華石は存在感を貯めていきます。自然の摂理的ではあたりまえの現象ですわ。』
くすくすと品良く笑う驥尾。
『…という事は、かくれんぼとか、便利だったりするんだ。』
へぇ…と先ほどとは違い目を輝かせる栄子。
驥尾は単純ですね、と微笑んだ。
「かくれんぼが、どうした?」
上から降ってきた声と顔に落ちる影に、思考が戻る。
「…え?」
視点が定まる先に見る見慣れた端正な顔。
「でかい独り言言いやがって。」
そして面白そうに口の端が上がり、自分を見下ろす赤みを帯びた瞳。
どうやら無意識に呟いていたらしい。
「ひ、飛影。どうしたの?というか、どこから-…」
思わず跳ね起きる。
頬に感じる風に視線を泳がせば空いたベランダが視界に入る。
(また、ベランダ…。)
「鍵が開いてるぞ。無用心め。」
おまえが言うな…と言いたいものの、こんな近くまで来られて気付かない自分も自分だ。
この石を身につけていれば、今の飛影のようになるのだろうか。
もちろん今は自分の思考も飛んでいたからではあるが…。
「で、どうしたの?何か、用事?」
「これだ。」
どこから出したのか、一枚の紙を渡される。
「これって…」
受け取り目を通すと、それは魔界統一トーナメント時の治療班のスケジュールだった。
それには各々の待機場所や交代時間、休憩時間等が事細かく書かれている。
確か自分の治療対象者は躯側だと聞いている。
「躯さん側って誰がいるの?飛影は入ってるよね?」
「…まぁな。基本、躯に仕えている奴らだ。主にこの城に居る奴ら、客や招待客は除いてな。」
「という事は、幽助君や黄泉さん達は一般の治療班さん達が担当なのね。」
「そうだ。治療班は各エリアに何人も派遣される。待機場所に怪我人が運ばれてくるからそいつらを治療してやればいい。」
「各エリア?」
「魔界は広い、その分参加者は星の数ほどだ。最初は大幅に落とすため、各エリア毎に何百人かを一気に戦わせ一人の勝者を出す。それからトーナメント戦だ。」
「……何百人?怪我人が一つのエリアに何百人??」
(やばい…なんか、やばい…)
「心配するな。おまえは躯班専属だ。躯は基本自分が認めた者しか側に置かん。忙しくなるのは後半だと思うぜ?」
前半治療に躯班の戦士はきっと少ない。飛影は自信ありげに笑いそう言う。
それは自分も含めた発言なのだろう。
自身過剰と言いたい所だが、彼の強さを栄子は知っている。以前、彼と魔界で過ごしていた時ですら彼の強さは計り知れなかった。
今、こうして無事に生きていれるのもあの時彼がしっかりと自分を守ってくれたからだ。
「でもそうなると、一般の治療班の人たち大変だね。」
「まぁな。しかも今回は参加者が前回よりも多いから長期戦も多いだろう。」
栄子はスケジュール表に目を通す。
各エリアでは3日の猶予がもらえらしい。
3日後勝者が一人じゃない場合、そのエリアは失格。
だから、3日以内に自分がたった一人の勝者になる必要があるようだ。
(…三日…。)
「ねぇ、このエリアって広いんじないの?期限日までに残った人達って見つかるのかしら?」
それに呆れた様に瞳を細める飛影。
「…見つけられないなら失格だ。力不足と取られる。それだけだ。」
「…降参は?」
「…降参の場合エリアから外れるか、言葉を発すれば降りれる。エリアには監視係りが飛び回っているからな。」
「なんか、色々あるのね、怖いなぁ。…ん?…待って、治療に夜は関係あるの?」
「おまえ、戦いの最中に夜ぐっすり寝れると思ってるのか?」
俺と過ごした日をお前はもう忘れたのか?と眉を寄せる飛影の視線が怖い。
(夜も現地で待機、なんだ…)
それもそうだ。
夜に乗じて動く妖怪もいるだろう。
怪我人が出ない保証がない。
「がんばります…。」
大会まであと少し…。
今更だが体力も必要のようだ。