第33.5話(妖狐編零)
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「いいかげん、あの娘を捨てよ、秀忠。」
「父上、なんという事をおっしゃるか!!それは人の言葉とは思えませぬ。」
それは真っ赤な夕日が辺りを包む時刻。
たまたま屋敷の廊下を歩く栄子と狐の耳に入ったのは、普段からよく聞く聞きなれた声と、栄子は恐怖、狐は嫌悪感を抱くもうひとつの声であった。
「あの娘は妖じゃ。あやつは今にわしらの肝を食らうぞ。お前を油断させ、お前の体も乗っ取るつもりなんじゃ!!きっとそうに違いない!!」
すぐ側にある部屋から聞こえる声。
狐の隣を歩く栄子は青ざめ足を止めるものの、ぐっと唇を噛みしめその場を足早に去る。
ころころとその場に転がる氷泪石。
しばらく経つとそこに出来る涙の痕。
(また、泣いているのか…)
狐は去る少女の後姿を見ながら息を付く。
慰めに行こうかと足を出す狐に、再び聞こえる声。
「秀忠、目を覚ませ。おまえは我が一族の誇り、おまえがあいつに唆されてどうする。妖は我らの敵で、憎むべき魔だ。」
「……。」
「利用価値のある妖ならまだしも、金にもならん妖など、汚らわしいだけではないか!!いいかげん、目を覚ませ。」
「…我が父ながら、残念です。」
低く冷たい声色。
秀忠らしくないそれに狐は珍しいな…と耳を傾ける。
「い、いや、目を覚ませとは言ったが、決しておまえが汚らわしいと言ったわけではない!!そこは誤解するな-…」
「母上を捨てた理由はそれですか?」
「い、いや…おまえの母は病気で…」
「人の子と同じように考えない方が身のためかと。妖の子は生まれた時から記憶がありますゆえ…。」
底冷えしそうな程ぞくりとする声に、父親の息の飲む様子が伺える。
狐はほう…と目を細めるものの、別に興味があるわけでも自分に関係のあるわけでもない。
「ご自身の命…大切なら、あまりでじゃばらないで頂きたい。」
「ひぃ…!!」
(…意外な力関係だな。)
しかし、狐の思考はすぐに別のことへ切り替わる。
俺には関係ない。
自分のするべき行動を思い出し、足早にこれ(狐)の主人の元へ向かうのだった。