第33.5話(妖狐編零)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「こんな夜はとても悲しくなるものだ…」
縁側で狐を膝に乗せ座る私に、彼は月を見上げながらそう呟いた。
切なそうに悲しそうに瞳を揺らす彼に、私も狐も意味が分からなかった。
あの頃からか、私も狐も月を見上げる癖がついたのは…
「また…だ。」
朝、目が覚めると指に走るかすかな痛み。
数日前、目が覚めた時からあった人差し指の腹の傷。
いつ切ったのか覚えがないものの、少し切っただけのそれは起きるとまたぱっくりと傷口を広げ治る気配がない。
隣に寝る狐を見やる。
始めは寝ている間に狐に爪でも立てられたのかと思った栄子だったが、今でも布団の上で寝相良く大人しく寝ている彼に、それはないな…と再び納得する。
この狐は育ちが良いというのか、なぜか品がある。
元々人に飼われていたのかと思いきや、出会った頃看病したにも関わらず警戒心からか爪を立てられ傷だらけにされたのを思い出す。
もしかして-…
「…捨てられたのかしら…。」
優しく狐の頭を撫でると目を薄く開け、気持ち良さそうにその手に鼻を摺り寄せる。
いつの間にか、指の傷から興味が狐に移った栄子。
しかし、ぺろりとその指を狐が舐めると異様に滲みるそれに思わず眉を寄せた。