第31話 リング
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「それは怒ります!!」
どんっとテーブルに両手を付く驥尾に思わず自分と驥尾のティーカップを片方ずつ両手で持ち上げる栄子。
「ご自分の事を好きだと言ってくださる方にお返事はおろか、目の前で他の男性の事を思って泣くなんて!!ご自分の事しか考えていないのですか?」
「き、驥尾ちゃん…お、落ち着いて…。」
「これが落ち着いてなどいられますか!!今すぐお返事してきなさい!!大事な方なのでしょう?失いたくないのでしょう?答えられないなら答えられないと…せめてしっかりと今のお気持ちを伝えなさい!!」
もともとどこからこうなったのか…
秀一が出て行った後、黄泉から聞いた蔵馬のその後の話。
そして、自身が彼と過ごした話や最近まで記憶をなくしていた話等、色々な事を話した。
飛影は途中でどこかへ出て行き、修羅はもう一度泣いてくれとはやし立て、躯は自己紹介も済んだから好きにしろと放置。
無言で出て行った秀一が気にならない訳ではないが、蔵馬の事で頭が一杯だった為、正直それ所ではなかった。
会いたいか?と黄泉に聞かれもしたが、あれから約千年の年月がたっている。
実際彼が自分の事を覚えているのか自信がない。
会いたい気持ちもあれば知りたくない気持ち、そして…会ってはいけない気持ちとが入り混じる。
気付けば日も暮れ、黄泉達も自室に戻る事になった為、栄子も続きは今度…と、自室に帰ることにした。
そして、躯が今夜も出かけると言い出したので、ちょうど部屋の掃除をしてくれていた驥尾に一緒に夕食をとらないかと誘ってみたのだ。
泣きはらした顔の自分を心配する驥尾に一連の出来事を話すと、みるみる彼女の表情が強張っていくのが分かった。
そして…今に至るのだ。
「信じられません!!栄子様!!聞いていますか!?」
「き、聞いているから、驥尾ちゃん!!紅茶こぼれちゃう…。」
彼女がこんなにも感情を露にする所等見たことがなかった栄子はその迫力に驚く。
(結構…パワフルガール。)
思わず顔が引きつるものの、軽はずみに相談してしてしまった自分自身を呪う。
驥尾ははっと何かに気付き、目を瞑ると大きく息を吸い込み、再び椅子に座る。
そして、こほんっと咳をすると栄子に瞳を向ける。
「栄子様。」
「はいぃ、驥尾ちゃん!!」
改めて呼ばれると思わず声が裏返える。
「すみません。声を荒げてしまいまして。そんなに恐縮しないでください…。」
頬を赤らめ目を伏せる彼女に、二重人格だろうか…と眉を寄せる栄子だったが、落ち着いた様でほっと胸を撫で下ろす。
「い、いいの。ごめんね…、よかったわ、夕食後で。お茶タイム中で…。」
両手に持つティーカップ。
零れたらまずい物の数がこれだけでよかった。
夕食中ならきっと何かが顔に飛んで来ていたに違いない。
「私…頭に血が上ると本来の姿が出てしまいまして。気性が荒いのです。」
「へぇ、どっちかっていうとかなりおだやかな方だと思ってました。」
「いいえ。普段はそうコントロールしております。…栄子様といると、どうも自然体になってしまう様で、いきなりでびっくりなさいましたよね?本当に申し訳ございません!!」
椅子から立ち上がると驥尾は頭を深々と下げる。
「や、やめて、いいの!驥尾ちゃん間違ってないもの!!私が無神経なの、そこすごく反省してるもの。」
「本当ですか…?」
小さな声で呟く驥尾。
「うん。」
だから…顔を上げてと言おうとするが…
「反省したのなら問題ないですね。なら有言実行ですわね。近々謝ってらっしゃい。」
にっこりと顔を上げて笑う驥尾に、伸ばした栄子の手が固まり顔が引きつった。
(驥尾ちゃん、本当に年下なのかな。怖い…)