第30話 彼の名前
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『とりあえず菓子でも食え。』
悲しくなり帰ろうとした栄子を止めたのは躯の一言。
そんな誘いに乗るか…と思っていた栄子だったが、出されたものはチョコレート。
以前躯からひとつもらった銀紙に包まれたそれはこの世の食べ物と思えない位の衝撃を彼女に与えた。
「奇琳さん、なかなかこれくれなくて…ずっと欲しかったの。…おいしすぎる。」
口に頬張るとその濃厚さと品のあるうまさに頬が落ちそうになりうっとりと頬に手を当てる。
「そうか、好きなだけ食べろ。」
「はぁい。」
躯は馬鹿な奴程かわいいとは良く言う…と側で小さく笑う。
「人間界からはるばる、蔵馬の…か?」
黄泉はベランダにいる秀一に顔を向ける。
それに苦笑しながら、どっちととも取れる仕草に、それでも黄泉はなるほど…と一人納得をする。
(また出た…クラマ…)
クラマの名前に一瞬、ピクリと反応した幽助。
目が合ったので何事かと思ってみるものの、気のせいかと思う程それは一瞬な為、それ以上は気にならないはずだった…
なのに…
「蔵馬、人間を連れてくるなんて余裕じゃん。」
修羅のその一言で室内の空気が一変する。
「修羅…。」
黄泉はため息交じりに呟き、躯はやれやれと腕を組みソファにもたれ目を細める。
「…私は秀ちゃんと一緒に来たわけじゃないですよ。」
なにが余裕なのか。
それ以外にも修羅の言葉に違和感を感じ、首を傾げる栄子。
そんな彼女を呆れた瞳で見る飛影。
「修羅、その話はまた後でしてやっからな…。」
焦る幽助を他所に修羅は意味が分からず眉を寄せる。
「…なんか俺変な事言った?」
「いや、言ってないけど…まぁ、待て。後でお兄ちゃんがあそんでやるから、ここは黙っとけ。」
がしがしと修羅の頭を力強く撫でる。
それに痛い!!と抗議をする修羅、そんな彼らはまるで兄妹のようだ。
そんな中、栄子の視線がゆっくりと動く。
目が合うのは翡翠の瞳。
優しく微笑むそれに栄子の心が燻る。
「クラマ…」
彼女にとってはその名だけが気になる。
声に出すとその響きは自身で違うものだと感じる。
揺れる翡翠の瞳に、もうひとつ投げ掛ける。
「蔵馬?」
「……。」
あたりが静まり返る。
「それは、秀一のあだ名だ。」
横から入る飛影の言葉。
「そうだよね…だって-…」
彼の翡翠から見え隠れする金に動機がする。
「私の知ってる蔵馬は、妖怪だもの。」
理解できない修羅の言葉が引っ掛かる。
静まり返った室内で、聞こえたのは幽助の唾を飲み込む音と、躯のため息。
視界に入るのは飛影の顔を背ける仕草…
そして-…
驚いた様に目を見開く秀一の顔…