第29話 集う者
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深夜の躯の部屋では真っ暗な中、一つだけ付いた明かり。
そのモニターの明かりはソファに腰掛けた躯の顔を照らす。
ぐすぐすとすすり泣く声…
画面に映るのは布団にくるまり小さく震えて泣く彼女の姿。
寝ればうなされ起きれば泣きつかれて眠る。
最近はそれの繰り返しだ。
躯はそんな栄子の様子を見ながら息を付くとそれの画面を落とす。
「…参るな…。」
頬杖をつき消えた画面を見つめる。
当初魔界に着たばかりの時のほうがよく眠っていた。
それがここ最近はずっとこの調子なのだ。
物思いに耽っていると落とした視線の先に入るテーブルに置かれた本。
読むか読まぬか…考えている間に面倒くさくなり放っておいたあの本。
それを手に取り開くと、ぱりぱりとページが音を立てる。
大量の涙を含んだと思われるその本は乾いてからというもの以前よりも倍の大きさに膨らみ見た目はかなり不細工だ。
「本当なら弁償物だぞ…。」
呟きながらそれを開いていく。
直筆の文字は薄くなり、場所によっては滲み捨てられてもおかしくない程だ。
だけど、これは捨てられない。
躯さえ捨てる気にはなれないのだ。
「…笑えるぜ。」
本をソファに投げる。
人間に執着するなど…
興味から好意に変わったのは事実。
だが…
「俺の時間を無駄にしてくれるな。」
そう呟くと躯は瞳を瞑りソファに深くもたれた。