第29話 集う者
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霊界の奥深く。
地獄谷は人間界でいうところの地獄に躯はいた。
「ほう…ここが、地獄沼か。」
ぼこぼこと沸騰した真っ赤な血の沼。
躯は霊界の管理下にあるその地獄谷を歩いていた。
「躯様、まだ見るのですか?」
「あたりまえだ。わざわざ肉体のまま来たんだぜ?霊界の有名な温泉でも浸かって帰ろうじゃないか、奇琳よ。」
「…それはもしやこの沼を言ってるんじゃ…」
「この沼は美容に良いらしい。」
「ほ、本気ですか!!躯様!!こんな所に我が主を-…」
「嘘だ、馬鹿者。死んでも入るか…。」
くすくすと笑う彼女にどっと疲れた顔をする奇琳。
「さっきから冗談が多すぎます。どこまで本気なのか…。」
そうぽそりと呟く。
元々、なぜ霊界の、なぜ地獄に来たかったのか。
しかも肉体のままで。
本来霊界へは肉体のまま行ける場所ではないのだ。
躯だからこそ入れた。
もちろんコエンマにしっかりと許可ももらってだが…奇琳自身はただ主に着いてきただけだ。
「地獄には魂がうじゃうじゃいるな。力も制限され…生きていた頃の面影すらない。どれが妖怪でどれが人間かもわからんのだな。」
目を細め周りを見回し、そう呟く。
「天国は幻覚の形としても肉体がありましたね。前世の行いでこうも自由を制限されるとは。」
地獄の魂達は常に罰を受けている。
階層にもよるが罪が重ければ重いほど下の階層へ行く。
さすがに最下層には入れてもらえなかったものの、話ではどれ程の重い罰を受けても待っているのは無だと聞く。
生まれ変わることも許されない。
「…あれは、それほどの罪だというわけか。」
「…??」
「奇琳、本館に戻って書庫へ行くぞ。」
「……。」
一体彼女はここに何の目的があるのか。
いつもこれくらい意欲を出して政務をこなしてくれたら言う事はないのだが…
奇琳は軀に気付かれないように深くため息を付く。
「まったく…嫌な予感が命中しそうだぜ。…奇琳、書庫にコエンマを呼べ。」
「あ…、は、はい。」
霊界のトップに対してもこの扱い。
躯だからこそできるのかもしれない。
彼が彼女の無礼に怒らないか心配だ…
「あと、帰ったら北の黒魔女を城に連れて来い。」
「…はい。」
(付いてくるんじゃなかった…)