第28話 鈍い心
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それは魔界の森の奥深くにある屋敷。
庭の植木や植物は綺麗に手入れされており、和を思わす外観、それらの風貌に秀一は彼らしいなと苦笑した。
「久しいな、蔵馬ではないか。」
ちょうど玄関を開けた彼は蔵馬の姿に目を見開き、手に持つ水撒きの桶を置く。
「久しぶりだな、妖駄。」
蔵馬はにっこりとその老人に微笑んだ。
妖怪・妖駄に。
「今度の大会には出るのだろう?」
庭の植木の手入れをしながら縁側に腰掛ける蔵馬に背を向けたまま言葉を投げかける。
「あぁ。」
「黄泉様も修羅様と共に出るとおっしゃっていた。修羅様は随分と成長された…会ったか?」
「いいや。あれから会ってはいない。」
「わしは、この魔界を統べるのに力だけの勝負はどうかと思っておる。」
「……。」
「わしは聡明な黄泉様や、蔵馬の様に才に長けたものが必要だと思っておる。馬鹿力がいくらあろうと頭が弱くては魔界は治めきれん。」
「…妖駄、この魔界では強者は生き抜くだけの才もセンスもある。」
「…甘いことを。どこでそんな腑抜けになりおった。…お主は分かっているのだろう?煙鬼は悪い鬼ではない、頭が切れぬ訳でもない…しかし、今の魔界に必要なのは先を見越し対処できる力を持つ者だ。…お主や黄泉様はバランスが良い。」
「…俺を買いかぶり過ぎだ。そんなにいつも冷静なわけじゃない。」
以前、黄泉に言われた事を思い出す…
『愛情よりも憎しみよりも先におまえは賢い対処法を考える、冷たくも恐ろしい奴だ』と…
感情に振り回される事など多々ある。
知らない感情の起伏には対処する術が未だに見つからないというのに。
狐は自嘲気味に笑う。
「…お主の慌てる姿、想像できんがな。」
妖駄はふぉふぉふぉっと笑うが、まぁこの話はここまでにしとこうかの…とゆっくりと振り返り蔵馬を見る。
「お主がわざわざわしの所へ来るなんて、猫の手も借りたい程何か困っておるのか?わしには古ぼけた知識しかないぞ?」
それにくすりと笑う秀一。
「話が早くて助かる。その知識を借りたいんだ。」
妖駄は自身の長い白髭を触り目を細める。
「長くなりそうじゃな…。」