第27話 君に捧ぐ
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躯の部屋が崩壊後、修復作業を行っていた奇琳は新しい棚に散らばった本を片付けていく。
中には燃えて灰と化したもの、無残にも形をなくした物と痛々しい本達もある中、生きているものを新しい棚に入れていく。
ふと手に取った本は絵本、こんな本が躯の部屋にある事自体不思議だが読まなくても置くことが多々ある主人故それは納得してみる。
しかし、なぜか異様に濡れている絵本に奇琳は雨でも降ったのかと首を傾げる。
空は淀んではいるが雨が降った形跡はない。
まぁ、いい…
奇琳が作業を続ける中、またふいに目にはいる本。
それは以前自分も読んだことのある直筆の分厚い本だった。
それを持ち上げるとパラパラとページが中から崩れ落ちる。
しまった…と、しゃがみ、拾おうと触るが湿った紙。
直筆の字が滲んでいる。
「どうだ?調子は??」
後ろから声をかけてきたのは躯。
奇琳の主人である。
「順調です。お茶会は終わったのですか?」
「まぁな、恋話してたよ。」
ふふふと嬉しそうに笑う躯を見て、違和感を感じる彼。
(躯様が恋話…似合わない。)
「恋話…弾んだんですか?」
この軽い感じはなんなのだろうか。
栄子が来てからというもの躯の表情が軽く柔かい。
「ガールズトークだぜ?当たり前だろ?」
「……。」
「ところで、その本はまだ戻すのか?」
「えぇ、文献や貴重な物は移動させます。生きている本達も同じです…、躯様…飛影と戦っている間に雨が振りましたか?」
「?いいや。」
「そうですか…」
湿った紙をぴらぴらと目の前で振り、おかしいなと首を傾げる。
「……湿ってるのか。」
「はい、ひどく。」
「……。」
「これは乾かさないといけませんね。乾かしても直筆なので字がもう見えないかもしれませんが…。」
「…おまえが干す必要はない。栄子にさせろ。…ここの作業もあいつに手伝わせろ。」
やれやれと躯は息を吐き目を細める。
「?…栄子様は躯様の客人では?」
「ふん、お仕置きだ。」
俺を騙しやがって…
躯は面白そうに口角を上げた。