第27話 君に捧ぐ
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深夜
あるホテルの一室では女性の断末魔が響き渡る。
「…もう、いいの?」
「あぁ、十分だ。」
黒い長髪の男は血の付いた口を拭う。
ベッドに横たわるのはたった今この男に殺された全裸の女の遺体。
今までと違うのは首より上がある事。
しかし、体には無数の肉を引きちぎりられた鮮血を吹き出す痛々しい無残な痕。
「まだいる?…大丈夫?」
「あぁ、心配ない。」
女は男の以前と違う様子に眉を寄せる。
魂のみを必要としていた彼が、いつからか魂だけでは飽き足らず生き血を必要としだした事。
そして、彼の女達の殺し方が変わってきた事。
「……力が弱っているの?私を生き返らせたから?」
揺れる女の瞳。
気まぐれに生かされ気まぐれに殺され、再び生き返された。それも彼のきまぐれなのだとは分かっている…しかしだ。
「心配ない、前より腹が減るだけだ。」
男はそう言うとベランダに出る。
柔かく吹く風は心地よく男は瞳を瞑る。
「いつの時代も風はかわらんな。こんな姿でも癒されるものだ。」
自分に付きまとう血の香り…死臭。
それはこの世界に下りてから以前よりも濃くなっている。
「私はどんなあなたでも、あなたなら…いいわ。」
「……人の心は変わる。」
「変わらない…私なら-…!!」
風が女の頬を掠め髪を切り、微かに走った痛みに目を細める。
頬にかすむ血の線…
「もう一度死にたいか?」
低く冷たい声色。
「あなたに殺されるなら本望だわ。」
怯まず真っ直ぐに男を見つめる女。
「一度死んで強くなったか…。」
男は笑う。
「…桃華、人の心は変わるものだ…」
「……。」
「ならば、また変えればよかろう?」
男は目を細め妖艶に微笑む。
「呪縛はそうそう解けんものだ。あいつは俺の物だ……。」
女は思う、男のそれこそまさしく呪縛。
幾年の月日を過ごしいつまでも解けることのない彼にかかる呪い。
しかしそれを言う事はない。
愛情はいつしか形を変え、呪いにすらなる。
「桃華、こっちへこい。」
夜風は少し冷える。
男は女を手招きした-…