第27話 君に捧ぐ
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逃さないと繋ぎ止めたのは
甘く体の芯が溶けていきそうな彼のキスだった。
痺れる体に、何も考えられない思考。
まるで夢の中だと錯覚を起こしそうな感覚。
見上げた先に映るのは月の光を浴びた赤い髪に、揺れる翡翠の瞳-…それはかすかに金を帯びたもの。
その中で聞こえた切なげな言葉に彼女は目が醒めた。
「待って!ちょっと待って!!」
気づけば彼を見上げ翡翠の瞳が自分を見下ろしている。
この状況はなんなのか…?
まだはっきりしない頭で急展開な今の状況を順を追って整理してみるも、なぜこうなってるのかが分からない。
会えた事が心から嬉しくて嬉しくて仕方がなかった事は事実。
自分からしてしまったキスはいいわけできないものの、なぜしてしまったのかさえ分からない。
彼を押し上げる両手。
以前とは違い彼が怖いわけではない。
すぐ側で見下ろす金色を帯びた翡翠の瞳は逸らすことなく自分を直視している。
頬が熱い。
唇に残る甘くも熱い感覚-…
このままでは頭がおかしくなりそうだ。
「お…おかしいよ、これ。」
やっと出た言葉。
何が?…自分がだろうか。
確かに私もすでにおかしいが、彼もおかしい。
先ほどの花は幻覚作用があった。
それでお互いおかしくなっているのではないか。
何も言わない秀一に言葉を続ける。
「秀ちゃん、花の作用で変になってるんだ…さっきの幻覚作用があったし!!」
一瞬翡翠の瞳が不思議そうに見開いたものの、すぐに形の良い唇がくすりと笑い瞳が細くなる。
「それでおかしくなってるって?」
いつもよりも艶のある甘い声。
「う、うん…」
彼の至近距離は心臓に悪い。
綺麗なだけではなく、見つめられると金縛りに合うかのように体が動かない。
自分の様子を見てくすくすと笑う彼は月に照らされいつもより妖艶に見えるのは気のせいだろうか。
「…なんで、笑うの?」
どきどきする。
月の魔力はだてじゃない…。
なぜか今日はおかしいことだらけだ。
「栄子が馬鹿だから。」
「な…ば、馬鹿って、ひど-…」
落ちてくる影に思わず瞳を強く閉じる。額に湿った暖かい感触。
さらさらと頬に落ちる赤い髪。
「君が好きだっていってるんだけど…まだ伝わらない?」
美しく微笑む彼の笑顔。
見慣れたその顔も、一体これは誰なのかと理解できないほど停止している。
幻覚…じゃない!!!!