第26.5話(妖狐編Ⅲ)
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彼女が見ていると知って他の女を抱いても
昔と今じゃ意味が違っていた。
行き場のない己の欲をぶつけるのは同じでも…
狐は彼女の気を引くため
秀一は彼女を遠ざけるため
1000年もの間想い続け諦めようとした末辿り着いた結果だと思っていた。
赤ん坊の頃から知っている女の子。
小さな手に興味本位で触るとぎゅっと握られ、思ってたより強い力に驚いた。
後ろからついてくる女の子をはじめはうっとおしいとさえ思った。
早く歩いてまこうとすると、少女はいかないでと泣きわめいた。
本当に始めはうっとおしくて…
俺が中学に入った頃は、ランドセルを背負った彼女がよく家に遊びに来ていた。
『秀ちゃんすきー!』
小学校5年生の少女が無垢な笑顔を見せる。
うっとうしさもいつしか愛しさに変わり、それに気付かない振りをしていた。
彼女はずっと子供のままな気がしていたから、それが出来たのかもしれない。
彼女が中学一年の頃、行方不明になった。
だけど、…わかっていたんだ。
帰ってくると…。
数年後、帰ってきた彼女を見て俺の中で狐が喜んだのがわかった。
その月日は彼女を成長させていて…
まだ幼さは残るけれど、女の色香を感じさせ、以前より艶っぽくなっていた。
帰ってきた彼女は以前と同様元気で明るかった。
だが何かが変わっていた…。
俺は知っている。
彼女を。
俺の中の狐の記憶がそう言う。
人間と妖怪の性の葛藤はひどく脆くて何度も崩壊しそうだった。
そして…あの魔界の海で-…
己の脳裏に彼女の「死」が横切り、それに絶望を覚えた時-…
失くす意味をどれだけ履き違えては生きてきたのか…
何に怯えていたのか…
残される事か…
それとも終わらないこの思いを抱き続ける事か…
すべて甘い考え…
あの時、どれほどの悲しみと自責の念が己を攻め呪った事か…
足元から崩れていきそうな感覚。
もう…迷う必要はない。
あの手を離さない…