第26.5話(妖狐編Ⅲ)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そして再び今に至る-…
今日だけだぞ-…
そう言った彼だったが、あの日以降も私が寝れないと部屋を訪ねるとまたか…と言いながら呆れながらも優しく迎え入れてくれた。
「おまえ…いい加減、蔵馬と仲直りしろよ。」
黒鵺には何も言っていない。
何も聞いてこないし、私も話したくなかったから言わないでいた。
「別に喧嘩してないもの。」
むっと頬を膨らませながら布団に潜り込む。
蔵馬とは違う黒鵺の香り。
別に嫌いじゃないもののやはりあの香りが一番好きだ。
今あの香りに包まれているのはきっと別の人。
「…おまえ、あいつが好きなんだろ?」
「…嫌い。」
「ヤキモチ焼くなんて最近のガキはませてるねぇ…」
「私、もうガキじゃないもの!!それにヤキモチじゃないもの!」
聞き逃せなかったのか顔を出しべー!!と舌を出す。
言ってることとやっていることが違うのが気に入らないのだ。
「…へぇ、ガキじゃないのか、おまえ。」
この子守にもそろそろ疲れてきた彼。
いい加減、一人で寝るか蔵馬と寝るかどちらかにして欲しい…。
「なら、俺の女になってみるか?」
「へ??」
すぐ横では瞳を妖艶に細め彼女の頭を撫でる手が首筋に落ちる。
「あっちではあっちでお楽しみ中なんだ。ガキ扱いしなくていいなら毎日だって俺の部屋に来てくれてかまわねぇぜ?」
そう言うと彼女の手を引く。
一瞬体が浮き驚いた栄子だったが、気付けば目の前には見慣れた黒鴉の顔が映る。
「…な、何?」
「なんだと思う?」
面白そうに瞳を細め自分を見下ろす彼に背筋が寒くなる。
「蔵馬には内緒だからな。」
しっと人差し指を口元に立て、近づく彼の唇。
彼の部屋のドアの隙間から聞こえる女性の喘ぎ声。
ぎしぎしと鳴るベットの軋む音。
…今日もだ。
隙間から甘い香りが漏れる。
女性特有の甘い大人の香り。
胸が痛い…
頭が痛い…
きっと最近は私が知らなかっただけできっとずっとあった。
「私の事、好きじゃない…」
本当に好きならこんな酷いこと出来ない。
彼は気付いてた。私が何を見たのか、知っているようだった。
頬に伝う暖かい涙…
ころころと床に落ち、しばらくすると形を消していく。
辛いのだ…
辛い…
なぜこんなに辛いのか…
「蔵馬……」
その場に蹲る。
まだ響く女性の喘ぎ声。
それは一際甲高く声を上げると静かになった。
そして、布のすれる音。
こちらに近づく足音。
自分は一体何に怯えているのか、急いで立ち上がるとその場を後に走り出した。
「盛んすぎるんじゃねぇか、最近。」
部屋から出てきた蔵馬に、壁にもたれた黒鵺は気だるそうに目を細め呟く。
「黒鵺…部屋の女、出しておけ。」
対して乱れていない服を整える。
「…おまえのだろ?」
裸で失神している女を部屋から出してどこに寝さすのか。
余っている部屋がないわけではないが…。
「…欲しいならおまえにやる。」
「いらねぇよ。」
何が悲しくて蔵馬の女をもらわなければいけないのか。
「…で、あいつどうするんだ?…大事なんだろ?」
蔵馬が彼女を追いかけないのなら自分が行くしかない。夜の魔界は昼間より性質が悪い。
「……。」
「…もう少し方法があるだろ、どっかいかれちまうぞ?」
その言葉に蔵馬はくすくすと笑う。
「……おまえ、頬が赤いぞ。」
黒鵺の頬には真っ赤な手形が付いている。
「おまえのせいだ。俺を怒るなよ?…まさかお取り込み中だとは思わなくてな…。」
馬鹿力が…と呟き頬を擦る黒鵺。
始めから本気で襲う気もなければただ早く元の鞘に収まって欲しかっただけだった。
「…黒鵺、俺とどれだけ一緒にいるんだ。」
「…ざっと今で500年位か?」
「なら…分かるだろ。」
そういうと蔵馬は窓に足を掛け外に出て行く。
わかってたらきかねぇよ…黒鵺は呟いた。