第26.5話(妖狐編Ⅲ)
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それは数日前-…
「あいつが飯食わねぇだと?」
黒鵺は朝食を取りながら、たった今栄子の様子を見に行ってきた部下にそう言葉を投げた。
「はい、どうも調子が優れないようで。布団から出てきません。」
「…ありえねぇ、食い意地の張ってるあいつが。」
いつもなら誰よりも一番に朝食を取り、自分達が朝食を食べる頃には菓子を食べ出しているくらい食欲旺盛な少女。
その彼女が食事をしないとは。
本当に病気かもしれない。
「頭にも報告したので、既に部屋に行っていると思われますが…。」
蔵馬が行っているのなら何かしら薬草も調合してくれるだろう。
だいたいの病気の治療はお手の物だ。
「分かった、俺も食い終わったら行く。」
部屋に入れる気などさらさらなかった。
きっと彼の部下は彼に報告すると分かっていた。だから鍵を掛け、窓も全部閉めた。
なのに…
「どこが痛むか言え。」
どうやって入ったのか、気付けば寝ている自分の頭を撫でる彼。
壁際に顔を向け彼に背を向けながら寝ているにも関わらず、心配してくれているのだとその口調と優しく撫でる手がそれを語る。
「…気分が悪いの、出て行って。」
手を払いのける。
あの人を触れた手で触らないで欲しい。
「…なにを怒っている。」
怒っているわけではない。
だけど、昨夜の出来事を思い出すとまともに顔を見て話す気にもなれない。
「怒ってない。だから出て行って。」
愛しいと言ったくせに。
「言いたい事があるなら言えばいい。」
あなたは気付いていないのでしょう?
私があの時あそこにいた事に…
「ないから出て行って。」
深夜トイレに行こうと部屋から出た所に見えた見慣れた背中に着いていっただけ。
ただそれだけだったのに。
「いいんだな、それで。」
「!!?」
驚いて思わず振り返る。
やっとこっちを向いたか…と金色の瞳を細め笑う狐。
だって…
言えるわけないじゃない…
私はあなたにそんな事言える立場じゃないのだから…
だけど…
「今思うことを言えばいい。」
「……。」
どういう意味なのか。
ここでこの淀んだ思いを伝えればどうなるのか。
「ただ言うからには覚悟を決めろ。」
意思を宿した冷たく見据える金色の瞳。
言えば、引き返せない。
頬に彼の指が触れる。
見上げたそこに映るのは彼の不安気に揺れるそれ。
(…だめだ…)
それに耐え切れず目を瞑り、口を開く。
「…出て行って。」