第26.5話(妖狐編Ⅲ)
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あのキスの日から数ヶ月-…
狐が自分から私に触れることはなくなった。
それは私も望んだこと。
それでいいのだと…
これでいいのだと、そう思っていたのに。
『男は溜まるもんなんだよ。』
以前黒鵺がそう言ったのを今でも覚えている。
男と女は元々の作りが違うのだと教えてくれた。
それは分かった、分かったつもりだ。
だけど…
なぜこうも違うのか。
あの時のキスは想像していたものとは違い野生動物に食べられるかのような錯覚を起こしてしまいそうなキスだった。
それからもいつもと態度の変わらない彼に私は勝手に安心していたのだ。
「…おまえは、俺を殺す気か…」
今にも泣きそうな顔で黒鵺の部屋の前に立つ栄子。
たった今まで寝ていた彼は頭を掻きながら勘弁してくれと肩を落とす。
「だめ…?」
今は深夜、彼女の両手にはしっかりと枕が持たれていた。
「だめだ、一緒になんか寝たら俺の寿命は短くなるところか瞬殺だ。」
帰れ帰れと手で払うが、彼女の瞳に一気に涙が溜まる。
コロンコロン-…
唇を噛締め強く閉じた瞳から彼女特有の涙が音を立て床に転がる。
「おい…泣くなって、こんな所蔵馬にでも見られたらまた俺の死亡率が…」
「蔵馬は来ないよ、…女の人と、いるもの。」
ぐすぐすと目を擦り呟く。
「……。」
「…だから、邪魔できないでしょ?だから、ここに泊めて!!」
ずいっと黒鵺の脇の下の隙間から部屋に入ろうとするが黒鵺に待て待てと止められる。
「なによ!私、もう眠くて眠くて嫌なの!!早く寝たいの…黒鵺、お願いだから一緒に寝てよ…」
再び零れ落ちそうに溢れ返る彼女の涙。
彼女のこの行動に、実は原因を理解していた黒鵺はため息を付き、今日だけだぞ…と呆れながらも栄子を部屋に入れる。
その時に嬉しくて感極まって黒鵺に飛びついた栄子だったが、そこは本気で彼に付き返され追い出されそうになったとはいうまでもない。
(まぁ…話くらいなら聞いてやるか。)
黒鵺はやれやれと息を付いた。