第26話 愛しき人
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会えたのに涙で霞んで彼の顔がはっきり見えない…目頭が熱い。
見えないなんて神様は意地悪だ。
彼の指が優しく涙を掬う。
「栄子…」
切なげに揺れる翡翠の瞳。
今にも泣きそうな彼の頬に手を伸ばす。
「秀ちゃんが泣きそう…。」
「そうだね。」
触れた頬はすべらかで柔かい。
それに手を添えると優しく微笑む彼の顔。
話したかった事も、聞きたかった事も一杯あった…
だけど、そんな事は今はどうでもいいのだ。
ただ会えた事がこんなにも嬉しいのだ。
ずっと会いたかった。
何度も願った-…
彼の声に、彼の香りに、彼の温度がどれほど恋しかったか…
胸が、高鳴る…
気付けば見開いた翡翠の瞳が目の前に映る。
唇に残る甘く柔かい感触。
「…あれ?」
今自分は何をしたのだろうか…
自身の唇に指を当てる。
そして、だんだんと自分のした行動に真っ赤になっていく栄子。
「しゅ、秀ちゃん、違うの今は勝手にその-…」
風が舞う-…
腕を引かれる。
視界に入るのはなびく赤い髪に流れる風景-…
開いたままの唇に被さる彼の唇。
存在を確かめるように降り注ぐ
それは-…
甘くも熱を持つキス-…
「栄子、愛してる。」
離れた唇から聞こえた切ない狐の声は…
背に草の冷たさを感じる栄子の耳に響く…
見開く彼女の瞳…
月が反射して金を帯びているのか…切なげに揺れるその翡翠の瞳
再び彼女の頬に落ちる赤い髪…
草の葉が舞う