第25話 翡翠の瞳に恋して
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
この世界に馴染んでいくと見えてくる彼らの色-…
感情が高ぶると彼らを包み込む赤い妖気。
自分の霊力がこの世界に来ると上がるのは薄々分かってはいた。
人間だれしも多かれ少なかれ霊力はあるらしい。
…しかし、消える時に発するのは霊力ではないと幻海は言っていた。
それは涙が石に成りかける事と関係あるのだろうか。
いつもそれが起こるのはこの世界でのみ。
この世界の空気は恐ろしいもひどく心地よい…
「このドレスも素敵ですわ、でもさっきのも捨てがたいですわね。あぁ~迷いますぅ…。」
「私はこっちが良いかと思います。この色合いきっと栄子様に似合いますわ。」
「あら、それなら私はこっちの方が-…」
「いえいえ、こっちが-…」
ドレスルームの床には色とりどりのドレスが散らばり、その中心には数人のメイドに囲まれながら立ちすくむ栄子の姿。
真っ赤なドレスの胸元には大きな薔薇が付けられ、裾には細かい刺繍の施された、存在感を表すそれを身に纏う。
始めはわくわくしながら着ていたドレス達も、何十着も着せられれば次第に億劫になっていくもの。
栄子の顔は、げっそりといていた。
既に着せ替えタイムは三時間が経とうとしている。
「私…これで、いい。」
もう何でもいいのだ。
よくこれだけ我慢した…自分を褒めてあげたい。
彼女達のパワーは底知れない、自分にここまでしてくれるのはかなりありがたい、ありがたいがやりすぎである。
「うん、私もこれが一番良いと思いますわ。」
「そうですね、栄子様と少しギャップがあって逆に素敵かも…」
「大人っぽいのに、かわいさを忘れない感じでいいです!!」
メイド達の意見も一致した様だ。
長かった…やっと開放される、そう思ったのも束の間。
「ではヘアメイクに入りましょうか、このドレスは一旦脱いでくださいね。まだまだ時間はありますから。」
「……。」
嫌な予感が脳裏をよぎる。
「栄子様の髪の毛はアップが似合いそうですけど、下ろして巻き髪でアレンジしてもいいかも…」
「いいえ、絶対アップです!!髪が足りないならウィッグも使いましょう!!」
「意外とストレートヘアで艶を強調してナチュラルでいくのもありだと思います。」
耳元で再び言葉が飛び交う。
やはりか…
栄子はもうなんでもいいよ~と呟く。
数時間後に始まる、躯主催のお披露目会。
月に一度行われるイベントの様なものらしく、何をお披露目するかはその時々によって違うらしい。
何もお披露目する事がなかった時には、直属の戦士達を闘技場で戦わせた事もあったらしい。
今回は近々ある魔界統一トーナメントに向けてのお披露目だと言っていた。
そして、基本堅苦しい事が大嫌いな彼女は、そういった行事は部下に仕切らす事が多いようだが、今回は自分が仕切ると言い出したらしい。
気まぐれに言い出した躯を部下の奇琳はやっと城主の自覚が出てきたのだと喜んでいたようだが…
きっと今回だけだろう。
まだ少しの付き合いの栄子ですら、そこはなんとなく分かってしまう。
改めて心底部下に同情してしまうが、喜ぶ奇琳にそこは言えずにいた。