第24話 偽想
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「栄子様は、彼氏はいらっしゃらないのですか?」
それは部屋の一室での話。
『ミツバチ・パンチ』を自室のベットの上で読んでいると、いつものようにバスローブやタオルの替えを持ってきてくれた栄子専用だというメイドが彼女に問いかけた。
「うん、いないよ。」
「あら、いないんですの?もったいないですね。世の男性は見る目がないのですわ。」
「いや、別に誰にも好かれないってわけじゃなくて-…」
「殿方はやはり女性の色香に弱くてらっしゃいます。栄子様が磨くべきところは私の目から見てもそこですわね。」
なんてひどい事を…
人が気にしている事をあたかもさらりと平気でいう彼女。
「ふふふ、形から入る場合は動きを少しゆっくりにしたらいいみたいですわ。なめらかな動きが女性度アップらしいです。」
「へぇ…そうなんだ。今度やってみようかな…」
それでも素直に聞き入れてしまう。
いつになれば色気が出るのだろうか…
「でも、好きな方いらっしゃれば自然となるやもしれませんね。相手を思うと自然と艶やかに変化していくのが女性でございます。」
「……あなたはいるの?」
こういう話題を振るという事はそうなのだろう。
メイドは少し照れたように、はい…と笑う。
「でも、その方とお話する事はありません。私は対等ではないのです。畏れ多くて…」
「…まさか、躯さんってオチじゃないよね?」
「なぜ、躯様が?あの方は女性でございます。」
きょとんとした瞳で見つめられ、逆にこっちが恥ずかしくなっていく栄子。
躯はあのような性格ゆえ、もしかしたらと思ってしまったが-…
「そ、そうだよね。でも、その言い方からすると…すごく身分が違うみたいな感じに聞こえちゃうんだけど…。」
「身分制度はこの地域では躯様が廃止されて随分と経ちます。…でも、ある意味そうですね。手が届かないのは事実です。」
「そうなんだ。それは気持ちは伝えないの?」
「…きっと振られてしまいます。好いてる方がいらっしゃるみたいで…」
「そう、なんだ。…片思いって辛いよね。」
ずっと昔の淡く暖かな思い出。
初めて知った辛くも甘い恋…。
どちらも叶うことはなかったけれど…
そして、今思うのは…
恋ではない、きっと…
「…もしや栄子様、好きな方がいらっしゃるのでは?」
「え…?」
「今、誰かの事考えてらっしゃいませんでした。」
見透かしたようにくすくすと笑う彼女。
「…わ、私??いや…そんな事-…」
(あれ?私今……)
口元に手を当てる。
誰の事を考えていたのか…
それはきっとさみしいからだ。
あたりまえにあった日々がなく心寂しいのだ。
恋ではない。
恋などあってはいけない-…
なぜ…
恋をしてはいけないのか-…
「誰かを愛するという事は辛いことです。でもとても幸せなこと…自分以上に大事に思える方なんてそういません。」
「…そうね。」
大切な人-…
声が聞こえる-…
きっと許されない-…
きっと…