第23話 人魚と男の物語
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次元の歪に巻き込まれ魔界に足を踏み入れた男は、人魚に助けられ恋をする。
その頃の魔界は酸の海などではなく人間界と同じように海水であった。
たまたま、海上で顔を出していた人魚が空から降ってきた男を見てそれを助けただけの事。
男は一目見た時から彼女に恋をし、魔界から帰るよりも彼女と一緒にいたいと思うようになる。
そして、彼女も彼の熱い思いと誠実な心に引かれていく。
幾多の困難を乗り越え、男と人魚は共に生きることを決意する。
しかし、所詮人魚と人間。
人魚はいつまでも若々しくいれたものの、男は一人老けて行く。
人魚にとって男との恋愛は一生に一瞬の出来事。
しかし、男にとってはそれが全て。
男はそんな人魚が憎くなっていった。
そんなある時-…
『不老不死になりたいか?私と会えなくなっても…』
人魚はそんな男の心情を知ってか知らずか男にそう問う。
男は答えた。
『不老不死になりたい』
人魚は永遠に近い命を持つ。
会えなくなるわけがない…
自分が死んだ後、他の者を愛するなど許さない…
男はそう思っていた。
数日後の朝、テーブルには食事が置いてあった。
人魚の姿は見えないものの、それを平らげる。
柔らかな肉は初めて食べる食感。
頬が落ちそうなそれに感動するのと共に、これは何の肉だと男は思う。
しばらくしても、彼女は姿を現さず。
一向に帰ってこない彼女に怒り、海に住む彼女の仲間の所へ出向いた男。
男の姿を見るなり、冷たく睨む人魚達。
居場所を聞く。
『おまえが殺したのだ』
『おまえがあの子の気持ちを疑ったからいけないのだ。』
『おまえを愛しているからこそ、おまえの為に命を捨てた』
食べた肉は彼女の物だった。
自分の浅ましい嫉妬と欲の為に命を投げ出した彼女。
男は自分の愚かさと浅ましさを呪う。
独りよがりの想い。
人魚の肉は永遠の命を約束する。
愛しい者のいない時間を過ごす永遠の命。
これは罰だ。
彼女を信じなかった為、自分の可愛さ故、受ける報い。
しかし、それはひどく歪んだ彼女の愛情でもあった。
男は忘れない。
自分の為に命を投げ出した女の事を。
自分のせいで死んでしまった愛しい者の事を。
彼女の死は男を永遠に縛る。
与えられた永遠に近い命が男を苦しめる。
女は知っていたのか、知らなかったのか。
男はこれからも長い時間生き続ける。
これを投げ出す事はきっと許されない。