第22話 海の底まで
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「すごい本の数~!!」
躯の部屋の隅には大きな本棚。
栄子は嬉しそうに見上げめぼしい物を探す。
「おまえが本好きだとはな。人は見かけによらんとは良く言う…」
「…どういう意味ですか?」
「そのまんまだが。」
ソファにもたれながら楽しそうに笑う躯。
「私、本は好きですよ。幼なじみが好きだったんでよく読んでたんです。」
「ほう…それはそれは。」
「本当ですってば!!!」
信じてなさそうな彼女に、思わずムキになっていしまう栄子。
「ふふふ、好きなだけ読むといいよ。ただ、少し難しいかもしれんが…。」
「私意外と難しいの好きなんです。なんたって幼なじみは全国模試一位なんですから。」
「…知ってるさ。大好きな大好きな秀ちゃんだろ?」
「!!!?」
「記憶を見たって言ったよな?」
面白そうに目を細め、首を傾げる。
「…全部、見たんですか?」
「あぁ、なかなか興味深かった。というか、おもしろかったな…。」
知っている顔が次から次へと出てきた事。
知り合い達との意外な関係。
そして…
「おまえ、なぜ妖怪に狙われているんだ?」
記憶の中に出てきた、長い黒髪の男。
妖怪だと名乗る彼に、異様な雰囲気。
彼女の記憶の中で、それは不思議な出来事であった。
今までの彼女の記憶で、その妖怪と繋がる所がどこか分からない躯。
別に面白くもない記憶の一つだったが、何か異質な感覚を受けていたのだ。
栄子もすぐ何の事かわかったのか…
「…それは、わかりません。ただ…」
「……。」
「どこかで会っている気は、します。どこかは覚えてないのだけど…」
首を傾げ、思い出そうと頭を押さえる。
やっぱり思い出せないと唸る栄子を見て、躯は笑う。
「そうか。」
所詮少しの興味でしかない彼女の中の一つの記憶。
これ以上は聞いても答えすらでないだろう。
だが、ひとつ引っかかる事があった。
しかし、躯はあえてそれを口にはしない。
「まぁ、気をつけろよ。妖怪でも色んなやつがいるからな。どっかの魔女は人間を安心させて太らせて食う奴もいたぜ?」
「魔女とかいるんだ。会ってみたいです。」
彼女は彼女でこの切り替えの速さ。
身を守る事に関して無頓着なのか、何も考えていないのか。
(狙われている自覚がないんだな…)
「魔女は怖いぜ。そこに魔女の生態の本があるぞ、読んでみろよ。おもしろいぜ…。それでも会いたいなら会わせてやるよ。」
「ふうん、あっ、あれかな!」
本棚の上の方に手を伸ばす。
しかし、その手は途中で止まる。
栄子の視線の先にあるのは分厚く古い本。
どこかで見た事のあるそれ。
「これ…」
そっとそれに手をかけ、本棚から出す。
ずしりと重みのある本にバランスを崩しそうになるものの、しっかりと抱えすぐ側にある机の上に置く。
その反動で中のページが何枚かパラパラと下に落ちる。
「…それは、以前旅商人から買い取ったものだ。人魚の血で書かれた直筆の珍しい本だそうだ。もう何千年と昔の物になるらしい。」
「…読んだんですか?」
落ちたそれを拾い机の上に乗せる。
「いや、内容に興味はない。だけど、奇琳が言うにはなかなか面白いらしいぞ。理解はできないと言ってはいたが…。」
「……。」
「興味があるなら持って行けばいい。そして、またその本の魅力を俺に教えてくれ。」
「なんでです?」
「どう感じるのかが聞きたい。」
内容を知らないのにどう感じるかを聞きたいとは…。
相変わらず掴みづらい妖怪である。
それでも栄子はこくんと頷く。
「でもこれここで読んでいいですか?バラけて部屋まで持っていけそうにない。」
「あぁ、そうしたらいい。」
躯は目を細め嬉しそうに彼女を見つめた。
銀髪の妖狐が記憶の中で優しく微笑む-…
それは、以前彼の側で一度見た物-…