第21話 新生活のはじまり
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この世界の薬は相変わらずすごいと思う。
体は一日であっという間に完治。
『免疫があったのかもしれんな。』
目を細め、ふふふと笑う彼女。
どこまで知っているのか。
記憶を見たと言っている位だ。
(花の毒にやられた記憶はないのだけれど…)
きっと以前彼と過ごした記憶も見たのだろう。
まだ完全に全てを思い出したわけではない栄子ではあるが、以前二度魔界に来ていた事、彼と過ごした事…。
なぜ忘れていたのか不思議なくらいだ。
そもそもいつまで記憶があったのか…。
栄子は、用意された自室のベッドの上に座りながら、窓から外を見る。
淀んだ大気、空には雷の亀裂。
「…ママも、皆…心配してるよね。」
だいたいすぐには帰れない。
それは彼女には経験済みで分かっていることだった。
「次は何年かな。」
ぽそりとひとり呟く。
聞く話によれば、自分の同じ時代で同じ時期。
まだ同じ時期を過ごしているのだと、いささか気分は楽ではあった。
飛影の時は、はっきり分からないがきっとあまり変わらないか、変わっても2、3年前のタイムスリップ。
彼の成長が会ったときとさほど変わらなかったためだ。
そして、一番始めのタイムスリップ、あれは…
時代を超えすぎていた。
「蔵、馬…か。」
銀髪の美しい妖怪、妖狐・蔵馬。
彼はまだ生きているのだろうか…
いや生きているだろう、なんせ彼は何千年と生きる妖怪だ。
秀一につけられたあだ名もクラマだ。
蔵馬…
どこかで稲荷神としてでも祀られているのだろうか…。
ずっと忘れる事はないと思っていた名をこうも簡単に忘れるなんて。
彼を思い出すだけで心が温かくなる反面、苦しくなるこの感情。
会いたい反面、会ってはいけないと想うそれ。
せっかく魔界に来たのだ。
しょげていても、何も始まらない。
「よし!!」
思考を切り替え、彼女は立ち上がる。
本来ならショックなはずも、三度目ともなると人間慣れてしまうらしい。
(そういえば、躯さんが話がしたいっていってたっけ…)
彼女はここの一番えらい人らしい。
とりあえず、彼女と話をしようと、栄子はベットから降りると、側にあったクローゼットに手をかけた。