第20話 幼き思い出
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疲労からか足取りの重い秀一は、公園に戻りブランコで俯いて座っている栄子の姿を確認するとその場に座り込んだ。
(やはり妖力はまだまだか…)
男を気絶させるだけで精一杯だった秀一。
あとは近くの公衆電話から警察に電話をした、それだけだ。
そんな彼に気付いて駆け寄る彼女。
秀一の側に来ると目線を合わすようにしゃがみ込み、心配そうに涙を溜めた瞳でじっと彼を見る。
『……大丈夫だよ。』
くすっと笑う彼に、彼女の瞳から我慢していたと思われる涙が洪水のように流れる。
『しゅう…ちゃん…うっうっうう…』
両目を手でこする。
彼女の顔が砂でまみれていくものの、同時に雨がそれを流していく。
そして、彼女の涙も同じ。
『…どうして俺に言わなかったの?』
『しゅうちゃん、おねんねしてた…』
『起こしたらいいでしょ?』
『しゅうちゃん、いつもいやみたいだったから…やめたの…もっとわるくなったらいやだったから…』
ぐすんと鼻をすする。
秀一は驚いた。
自分の感情が幼い彼女にばれていたとは思いもよらなかったのだ。
子供相手に、まさか幼女に分かるはずはないと彼は思っていた。
大人でも騙せている感情。
確かに栄子の前では、普段より感情が表立つのは確かだ、だがそれには理由があった。
なぜ同じ名前なのか。
忘れられない記憶が彼女の名を呼ぶ度に蘇る。
それが、彼には我慢ならなかった…。
同じではないのに、同じ名前を呼ぶ自分に抵抗があり、尚その名を呼ばれ、にこやかに返事をする彼女に嫌悪感を抱くこともあったからだ。
しかしだ…
『いたいのごめんなさい…』
秀一の膝にふうふうと息を吹きかけ、痛そうだと顔を歪める彼女。
『雨だから、意味ないよ?』
くすくすと笑う。
秀一は彼女に対して少しの罪悪感を感じるのと共に、自身の心が軽くなるのが分かった。
『…どうしたら、いいの?』
困ったように眉を寄せ泣きそうになる彼女。
『勝手に直るから。』
『…おかおも?』
『うん、そうだよ。』
いつも自分に冷たい彼が優しく話す事に栄子は不思議そうな顔をする。
そして、初めて頭を撫でられ、栄子は驚き彼の手が触れた部分を自分で触る。
嬉しそうに、へへへと笑う彼女の表情に、秀一も一緒に微笑んだ。
彼女は彼女なのだ…
あの人ではないのだから…
そう、思っていたんだ。
ずっと…
なのに、気付けば目で追ってた。
好きな人が出来たと聞くと、嫌な気分になっていた。
そして…
気付けば俺は君に恋をしていた。
過去に愛した人だとも知らずに、俺はもう一度君に恋焦がれたんだ。