第20話 幼き思い出
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幼い栄子は今以上に幼なじみに懐いていた。
彼に手を引かれ公園に来ていた栄子。
事の始まりは秀一の一言から。
『ここでいい子にして遊んでて。』
優しい口調だがどこか疲れた雰囲気を醸し出す彼に、栄子は子供ながら嫌々なのだと言う事は分かっていた。
『……しゅうちゃんは、あそばないの?』
『あそばない。』
砂場につくと、シャベルとバケツを栄子に渡し、彼は近くのベンチに腰を下ろした。
それを面白くなさそうに見る彼女だったが、それも最初だけ、幼い彼女の興味は砂場に向き一人で山を作り出す。
秀一はそんな彼女の姿を見ながら、欠伸をする。
そして、どこか面倒くさそうに目を細め、そのまま目を伏せた。
そして…
ぽつぽつ…
雨が彼の頬にかかり、秀一は目を覚ます。
うっかり寝ていたのだと気付き、雨が降ってきたから帰らねばと砂場に目を向けるが、そこには崩れた山とシャベルとバケツだけが転がる。
『……栄子?』
嫌な感覚が体を走る。
人間で子供で妖力が低い秀一でも、この勘は当たっていると自身の中の狐がそう言っていた。
公園内を見回し、すぐにいない事を確認すると公園前の道まで出る。
そこに男に手を引かれる栄子の姿。
嫌々と首を振る彼女に、にっこりと笑い強引に手を引く男。
一見人の良さそうに見える男だが、たまたま男の下半身に目がいった秀一は眉を寄せる。
あきらかに幼女に興奮していると思われるそれは幼い秀一にとっても、ひどく嫌悪するものだった。
『その子を離してください。』
後ろから男に声をかける。
男の隣にいる栄子の顔がぱぁっと明るくなる。
『秀ちゃん!!』
振り返った男は笑顔を崩さないまま秀一を見るが…
『…ちょっと、この子に用事があるんだ。すぐに公園に返すから少し待っててくれないかい?』
『やだ、しゅうちゃん!』
秀一に手を伸ばす彼女だったが、もう片方の腕を男は引っ張る。
『すぐ済むから、ね。すぐ済むんだから。』
舌なめずりをする男に栄子は顔が青くなる。
幼いながらに身の危険を感じているらしい。
男は再び強引に彼女の腕を引っ張る。
雨が強くなる。
地面に跳ね返る位の強い雨が、ざぁざぁと音を立てる。
『ほらほら、雨に濡れちゃうから、早く僕の部屋に…』
『…手を離せ。ロリコン。』
低い声が響く。
『んー?今なんて?』
笑顔で振り返る男。
『手を離せ、イ○ポ野郎っていいました。』
笑顔で返す秀一。
しかし、目が笑っていない。
『ぼく~??そう言う口の悪い事言っちゃだめだって…パパやママに教わらなかった、の!!!』
突然男の声が変わったと思ったら、一気に鬼の様な形相になり、秀一は顔を殴られ、その反動で道に倒れる。
『しゅうちゃん!!!』
秀一を殴るのに男が手を離した隙に、彼の元へ走って行く栄子。
『あらあら、殴るつもりなかったんだけどなぁ…、でもこれで懲りたでしょ。口は災いの元って、これから気をつけるんだよ…。さぁ、君はこっちにおいで。』
口元の血を拭い起き上がる秀一の側で震える栄子。
『栄子、公園まで走れ。』
彼女の耳元で囁く子供らしくない低い声。
『……しゅちゃんは?』
『いいから、早く。』
秀一は立ち上がり、男の前に立つ。
栄子は一瞬躊躇するものの、走り出した。
『あ…なになに、おいかけっこ?』
嬉しそうに追いかけようとする男の前で腕を広げる秀一。
彼は血の混じった唾を吐くと、少し目を細め笑う。
『おまえ…俺の一番だぞ。』
やらないつもりだったのに…と、彼はなぜか嬉しそうに呟く。
『へ?何言ってるの?まだ殴られたりない?』
へらへら笑いながら近寄る男に、狐は目を細めた。