第19話 記憶の欠片
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狐の瞳が金色に帯びる。
「なん、だと…?」
「貴様がふらふらしているから、栄子が消えたと言っている。」
イラつきながら落ち着きなく話す飛影。
そこは霊界の書庫であった。
金色に体が包まれ消えるまでにはだいたい数分を要する事を秀一は知っていた。
しかし、今回は秒単位。
そして、なぜか普段から持たせている自身の妖気を含ませた物は一切の反応も見せなかった。
「…飛影、いますぐ魔界へ行きます。時代を超えてなければすぐにでも連れ戻せる。」
書庫から飛び出すのは妖狐の姿へ徐々に変わり出す蔵馬と邪眼を開いた飛影。
勢い良く飛び出す彼らに警備班は姿を確認する事すら出来ず、風かと首を傾げる。
「時代を超えるだと?何を言っている?」
「彼女は一度時代を超えた事がある。始めは人間界の平安時代…。あなたとは当時より数年前の魔界のようでしたが…だんだんとタイムスリップの時代感覚が短くなっている…。」
「…それを魔界で特定していいのか?」
「あぁ、飛影と会った時は魔界だ。それに一回目も魔界が目と鼻の先のような場所にあいつは落ちた。」
完璧に妖狐化する蔵馬。
飛影は狐の言葉に目を見開いていた。
「だから、今回も魔界の線が濃い。」
「…蔵馬、おまえー…」
「なんだ?」
「あいつは…知っているのか?」
「いや、記憶すらない。」
たんたんと話す狐。
だがかすかに哀しみを含んだ瞳を飛影は見逃さなかった。
「……。」
霊界の大門を通り抜け、二匹は魔界へと向かう。
花の香りに…懐かしい魔界の風。
「花に囲まれた姫か。なかなか面白い。」
頭上で誰かの声。
女の人?
それに何人かの気配。
だめだ…瞳があかない。
声も出ない…
「奇琳を呼んで来い。花の毒で粘膜がやられかけているな。…とりあえず目と、喉か。」
瞼に触れるその手が冷たくて気持ちが良い。
「ほう…起きているのか。話せないだろうが、口元が笑っているぞ、大した人間だな。」
くつくつと笑う声。
「俺の花壇に落ちるとは…運がいいのか悪いのか。」
これが栄子の三度目の魔界へとなる。