第19話 記憶の欠片
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目の前は真っ暗な闇。
『秀忠…ごめんなさい。ごめんなさい…』
女の子の声が聞こえる。
『許して…』
ぐすぐすと泣くそれは、聞いたことのある声。
『もう、泣くな。』
低い男の声。
でも優しく心地の良い声。
『蔵馬…』
『お前はいつも一人でなぜ泣く。なぜそこまで許しを請うのだ。』
『それは…』
視界が開けていく。
ふわふわと夜空に浮いている自分は、それらを見下ろしている。
これは、夢…だろうか。
そこに見えるのはどこかの大きな屋敷。
すぐ側にある蔵の隅で泣くのは先ほどの女の子のようだ。
桃色の着物を着た女の子と、それの側に寄る白装束の格好をした男。
耳と尻尾の生えた銀色の髪の…妖怪。
優しく撫でるその仕草。
『なぜ、なにも言わん。俺が殺したのだ、自分を責める必要はないと言った筈だ。』
『違う…』
それでも彼は私といた事で死んでしまった。
女の子の感情に胸が締め付けられる。
気持ちが悪い…。
辛い…
悲しい…
苦しい…
許してほしい…
これは…
『…それだけではないだろう。他になにを想う?』
切なげに眉を寄せ金色の瞳を揺らす妖怪。
…私はこの場面を…
この人を、知っている…
『それは…』
しかし、彼を見上げたまま、答えない女の子。
風が二人の間を通り過ぎる。
『…寒いな、中へ入ろう。栄子。』
痺れを切らした男は切なげに笑う。
名を呼ばれ胸が熱くなる。
何かが勢い良く流れ込んでくるこの感覚…
『蔵馬…ごめんなさい。』
『何を謝る…、ほらおいで。』
女の子を抱き上げる蔵馬。
ころころと転がる氷泪石。
それはしばらくすると溶けてなくなっていく…
私の涙…
知っている…蔵馬。
栄子はあなたに惹かれていたと…
だから許しを請うしかなかったと…
忘れていた。
記憶の欠片…
私は以前もう一度だけ…
魔界に行っていたんだ。