第18話 気分転換
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人が溢れる。
まだ夜にしては早い時間だというのに、金曜日の夜は始まるのが早いらしい。
「へぇ、栄子ちゃんて一人っ子なんだ。なんか弟いそうな感じだよね。」
「あ、よく言われます。」
繁華街にあるおしゃれな居酒屋。
中原のコンパに呼ばれたのは、栄子と同僚の浅野。
浅野は栄子の隣で顔を赤くして少し酔っている様子。
栄子はというと、飛影があのまま本をどうしたのか、そればかりが気になりお酒があまり喉を通らなかった。
(幽助君や螢子に見られたら…きっと馬鹿だと笑われるか、哀れな目で見られたりとかするんだろうなぁ…)
「栄子、どう?」
すぐ耳元で囁かれた同僚の声に彼女の思考は現実に引き戻される。
どうとは?一瞬頭の中で疑問が浮かぶものの、何かを理解すると、栄子は苦笑し首を振る。
「今日は私気分転換なだけだから、浅野がいいなぁって思う人いたら協力するよ?」
「あら、そうなの。結構皆男前じゃない?」
「そう、…かな。」
確かに整った顔立ちだと思うが…
こういう感覚は自分ではあまり分からない栄子。
「普段、いいのが側にいてるから分からないのよ、あんた。」
「いや、そんなことないよ。かっこいい人はかっこいいと思うもの。」
「誰?」
「…秀ちゃん、とか?」
「……あ、そう。」
それを言ってるのよ、それを。と浅野は呆れたようにため息を付く。
「なに~?何の話してるの?」
いきなり二人の間の後ろから顔を出す男の子。
気持ちよく酔っている様子で、飲んで飲んで!と栄子達にお猪口を渡すと熱燗を注いでいく。
(げ…もう、こんなの飲んでるの?いつの間に。)
しかし、飲みにきたのだからここで飲まないわけにはいかず、ノリに任せ栄子はそれをぐいっと一気に飲む。
いい飲みっぷり!!と周りは手を叩く。
「栄子、私熱燗飲めないから、飲んで。」
「え…そうなの…?」
「はい、じゃぁ栄子ちゃん、飲んでね~!」
再び空いたお猪口に熱燗を注がれ、浅野の分までも前に置かれる。
(嫌いじゃないけど…これはなかなか厳しいか?)
どうするべきか、と苦笑いになる栄子。
そんな彼女の様子に気付いたのは中原だった。
「こらこら、そんなにいきなり飲ませないでちょうだい。この子、そういう系のお酒はあまり強くないのよ?」
そう言って側まで来ると、栄子の分をくいっと飲む。
「おお、こっちの姉さんすごい!」
ぱちぱちと手を叩く男の子達。
そうして盛り上がる中、
「飲めないなら、無理しなくていいんだからね。」
と、中原はいつもより優しく栄子に言う。
「先輩……。」
じーんと胸が熱くなる。
厳しくとも、本当に姉御肌の彼女。
自分の様子がいつもと違うのを彼女は気付いていたのだろう。
(よし!!)
「飛影がなんだ!!」
お猪口を上げ、叫ぶ栄子。
「え…ど、どうしたの栄子。飛影君がなに?私彼に会いたいわ!!」
浅野はどこにいるの?と周りを見回す。
「私、飲みます!!先輩!!」
「あ…そ、そう?いや、そんな頑張って飲まなくてもいいのよ、無理しないで…」
なぜいきなり火がついたのか。
いきなりのテンションの上がりように中原はあっけに取られる。
「いいねぇ、はい、じゃぁ、どうぞ!!飲んで、飲んで。」
注がれるお酒。
栄子は思った。
なぜ気晴らしに来ているのに飛影にびびらなくてはならないのか。
中原はしょげている自分の為を思い誘ってくれた。
それで逆に中原に気を遣わせるなど、あっていいわけがないのだ。
お酒をぐいっと飲み干す。
すでに中原には早く帰ると伝えてある。
本ががなんだ!!
あれはただの勉強なんだから!!
栄子はお酒を仰ぐように飲みだした。