第17話 過保護な奴ら
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「ただいま、飛影。今日はキムチ鍋だって。」
部屋に入ると、ソファに寝転び漫画を読む飛影が目に入る。
「…そうか。遅かったじゃないか。」
むくりと気だるそうに起き上がり、栄子の側まで行くと顔を寄せ、怪訝そうに顔を顰めた。
「…おまえ、なんか食べてきたな。」
「うん、幽助君の所でラーメンを。」
「…まだ食うのか?」
「え…なんで?だってキムチ鍋だよ?」
「……。」
きょとんとした表情をする栄子に思わず顔が引きつる飛影だが、やれやれと目を細め、再びソファに腰を下ろす。
(なんで立ったんだろう…)
「今日は何も変わったことはなかったんだな?」
再び漫画の続きを読み始める彼の隣に腰を下ろす。
「うん、…飛影も心配しすぎだよ。今日もまさか来てるなんて思わなかったし…。」
栄子の母親が彼を家に招き入れる事が最近多々あった。
彼が秀一の友人という事が大きいのか、彼に対する扱いは幼なじみ並だ。
いつの間に飛影と母親が顔見知りになったのか、栄子は知らない。
「邪眼って、すごいよね-…。」
「?…なんの話だ?」
「いいえ、別に。」
(勝手な憶測だけど、それしかないじゃない…)
実際は、家の側にいた飛影に母親がたまたま声をかけた事から始まったのだと彼女は知らない。
「ねぇ、飛影。修行とお仕事…大丈夫なの?」
こんな所で漫画を読んでいていいのか。
いやはや自分にかまっていていいのだろうか。
栄子は先ほどの蛍子たちとの会話を思い出し心配になっていた。
「…どうにでもなる。」
「幽助君にあたっても負けちゃわない?」
幽助だけなら彼を応援しようと思うが、飛影も出るなら話は別だ。
「なんだと?」
彼の声のトーンが低くなり、赤い瞳と目が合う。
「いや、だっていい勝負だったんでしょ?この前手合わせしたって、幽助君が。」
「おまえ、俺が負けると思ってるのか?」
「いい勝負なら後は大会までの努力で変わるじゃん。」
「……。」
「幽助君にも勝ってほしいけど、私は飛影に優勝してほしいな。てか、飛影の応援行きたい。」
にっこりと笑う彼女に飛影は目を見開き、しだいに頬が熱を持っていくのを感じたのか、ふんっと横を向き視線を再び漫画に戻す。
「…あ、照れてる?」
かわいいっと面白そうに笑う栄子。
「…おまえ、死にたいのか。」
「ごめんごめん。でも、本当に応援行きたい。どこでやるの?」
「…魔界だ。」
「ってことは、瘴気の薄い所じゃないと無理なのかな。」
「……。」
彼の視線が栄子の胸元のネックレスへいく。
先日幻海からもらったルビーのネックレスだ。
「やだ、飛影のエッチッチ。」
前を隠す栄子。
「本当に死ぬか。」
「嘘、ごめん。このネックレスどうかした?おばぁちゃんにもらったんだけど。あっ幻海おばぁちゃんって言って私の本当のおばぁちゃんじゃないんだけど…」
「…お前、魔界に来れるぜ。それは霊界の天然石だ。瘴気を浄化できる。」
「やだ、まじで!?なら、マジで応援行きたいな、私!!」
(おばぁちゃん、なんて良いものくれたんだろ!!)
「考えといてやる。」
飛影は嬉しそうにはしゃぐ栄子を横目に鼻で笑う。
一階から母親の夕食が出来たのとの声が響く。
「あっ、私手伝うの忘れてた。」
「おまえが手伝った方が遅くなる。」
「ひどーい!!」
けらけら笑いながら、二人は一階へ降りていく。
懐かしい感覚は、二人の思い出を鮮明に映し出す。
また、同じように時間を刻めるなど、もう二度とないと思っていた空間。
栄子はもちろん、飛影は彼女以上にそれを心の奥で噛締めていた。
自然に上がる彼の口角は、本人すらも気付かずにいた。