人造妖精と行き止まりの夢/メインストーリー

 貴族の別邸とは思えない、荒れ果てた屋敷。
 よもやそんな場所に、
たった一人で軟禁されるなどとは思わなかった。

 ここはエルフェンバイン家領の一角であり、
かつては銀をはじめとする鉱石がいくらか取れたらしく、
それなりに栄えていたそうだが、
鉱石が掘り尽くされてしまえば不便なだけの土地だ。

 現在は王都に続く街道沿いに、領地の中心が移っている。

 廃嫡された身でありながら子爵領の屋敷を充てがわれたのは、
せめてもの温情だろうか。
 いや、この場合、これ以上他所で恥を晒すなという意味だろう。
父は、僕の顔すら見たくないようだった。

 軟禁生活が始まって間もなくは、食うに困らない程度の支援があったが、
雪で道が塞がったのを機に、それも無くなった。
 外出の許可も無く、今にも崩れそうな屋敷と荒れ果てた庭園だけが、
僕の命綱となった。

 食べるものは、選びさえしなければ沢山あった。
毒が無く、咀嚼できる硬さで、最終的に飲み込めさえすれば、
全て食品として扱った。

 東の方から取り寄せた民族衣装は、貴族の間で人気の一品だが、
それを羽織って食べ物を探し回る姿は、
実に滑稽だろう。

 待ち望んだ雪解けの季節がやってきても、
支援の手は伸びてこない。

 代わりに、敷地の外に何か落ちているのが見えた。

 目凝らすと、髪の長い女が倒れているのだと分かった。

 敷地の外に出る事は許されていない。
 けれど、彼女を放置するのも憚られた。

 場所は敷地の内外にまたがる林の中。
 柵も無く、その境界はあやふやで、
見張りがいる訳でもない。
 
 僕は、数ヶ月ぶりに敷地の外へ足を踏み出した。
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