人造妖精と行き止まりの夢/メインストーリー

全くもって訳が分からなかった。

なぜ、父も陛下も憤慨しているのだろう。
なぜ、僕の婚約者は泣いているのだろう。

いずれ爵位を継ぐ者として、努力を重ねてきたつもりだった。
いずれ夫となる者として、誠意ある行動をしてきたつもりだった。

それなのに、どうして。

身に覚えのない王女との不貞。
いくら潔白を主張しても、誰の耳にも届かない。

王女が真実を語ってくれると思いきや、
そもそもの発端が王女だという。

王女は、なぜそんな嘘を吐くのだろう。

どこかで王女の不興を買ったのだろうか。
それとも、本気で僕を見染めたとでもいうのだろうか。
僕は王女と、挨拶以上の言葉をかわした事など無いというのに。

何より理解できなかったのは、
誰も僕を信じなかったことだ。

血を分けた家族も、
愛を確かめ合ったはずの婚約者も、
忠義を誓った王も、
僕の話を聞いてはくれなかった。

王女の言葉だけが、僕を糾弾する理由。

なんてお粗末なのだろう。
国の中枢にある者達が、証拠を揃える事すらしないなんて。

娘の言葉を鵜呑みにする王も、
それを諌めない周りの貴族も、
この国には愚か者しかいないのか。

こんな連中が治める国なんて、いっそ滅んでしまえばいい。
こんな連中を崇める民なんて、いっそ消えてしまえばいい。

それでもたった一人。
僕の言葉を信じてくれる人がいた。
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