人造妖精と行き止まりの夢/メインストーリー

もはや、泣く気にもならなかった。
笑いすら込み上げてくるほどに、人間は滑稽だった。

髪色が珍しいから魔女だって?

なんて想像力豊かなのだろう。
馬鹿馬鹿しいにも程がある。

もし私が本当に魔女だったら、
祖父が長生きするよう魔法をかけたし、
去年の不作だって起こさせなかった。

身に覚えの無い言葉で罵倒され、
真実を訴える度に殴打され、
嫁入り前の身体を検められた。

何が神だ。何が信仰だ。
偉そうな説教もご立派な教義も、
全部ただの妄想じゃないか。

神なぞただの木偶だ。
いるのかいないのか分からない、
いたところで何もしてくれない。

そんな事も知らずに祈っていた自分に腹が立つ。

ただの田舎娘を魔女と誤認する、
目玉の腐った聖職者共の頭を、
片っ端から叩き割ってやりたい気分だ。

二度とくだらない想像をしないよう、
二度とふざけた妄言を吐かないよう、
人間をこの手で滅ぼしてやりたい。

私の怒りと憎悪が頂点に達した時、
うんうんと頷く狼に出会った。

「君とは随分と気が合いそうだ。どうだろう、一緒に人間達を懲らしめてやらないか?」

狼は実体の無い思念の集合体だった。
人間の想像力を憎んで集まった、哀れな獣。
どれだけ人間への報復を誓っても、
人間に触れることすら叶わない者達。

「そう。それが問題だ。人間に復讐するには、まず、肉体と呼べるものが必要だ」

ああ、なるほど。だから「一緒に」なのか。

私は、狼に身体を貸すことにした。

理不尽な理由で殺されるより、
狼に騙されて「私がバカだったわ」と
自嘲する方が、ずっとマシだと思ったから。
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