人造妖精と行き止まりの夢/メインストーリー

何もない小さな村、どこにでもある家、平凡な家族。
それでも穏やかな日々は何ものにも代え難くて。

苦労も不便も並べ立てたらきりが無いけれど、
それが報われるだけの幸せが、私には沢山あった。

街で見かけた、年の近そうな女の子。
フリルとリボンで着飾っているあの子は、きっと凄く豊かな生活を送っている。

でも、お金持ちのあの子は仕立て屋さんに頼んだ服しか知らないでしょうね。

母が愛情を込めて仕立てたひよこ色のワンピースは、
袖を通すと自分が優しい人間になれたような気がして、
嬉しくなった。

家に帰れば、畑をなぜる風が
土の匂いと緑の音を運んでくる。

父が育てた野菜は温かいスープがよく似合う。
一口食べると、心まで温かくなった。

お金が沢山あるだとか、良い学校に通っているだとか、
そんな分かりやすい幸せではないけれど。

私だけが知っている小さな幸せは、
この両手に収まり切らないほど沢山ある。

これからも増えていくであろう小さな幸せたちを、
思い切り抱きしめながら私の人生は続いていく。

そう信じていた。
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