人造妖精と行き止まりの夢/メインストーリー
ツイックラインが人造妖精の発生地を予測し、ついにシルバレットは彼の地に辿り着く。
イエーガーによって鍛えられた腕ならば、狼の心臓を穿つことも出来よう。
しかし、彼らは依然として敵の全貌を掴んではいない。
シルバレットは旅人を装い、街を見て回る。同行する赤ずきんも、注意深く周囲を探った。
結論として、これまで調査したどの街よりも人造妖精の影響が強かった。
崩れた塀も、壊れた鍬も、直す者は居ない。
そこからさらに調査範囲を広げ、街の外れの森に入ると、そこにはうずくまる女と、数人の人影があった。
「お嬢様、お気を確かに」
「ロベルトのお人形……ロベルトの……」
人造妖精を、瞬時に人形であると見抜いた女は、何者かの名を口にしていた。持ち主か、あるいは製作者だろうと二人は当たりをつける。
「あなた、素体を作った人間を知っているの?』
普段、人前に決して現れない赤ずきんが、女に声をかけた。
「……あなたは、彼のお人形じゃないのね」
「君、目が……」
シルバレットは、腫れ上がった目元が気になったが、長く泣いていた事を察して、続く言葉を引いた。
「この素体は誰が作ったの。教えなさい」
気を遣うシルバレットとは対照的に、赤ずきんは一切遠慮しない。人間の小娘なんぞより、仲間の妖精達の方が、彼女にとっては遥かに大事だった。
口調の強い、明らかにロベルトの人形を敵視している赤ずきんを、女は警戒した。ロベルトが死んだと思い込む女にとって、この人造妖精は形見と同じ。赤ずきんの問いに、答えるはずがなかった。
「行きましょう、シルバレット。ロベルトという名前は分かったのだから、勝手に調べて勝手に探せば良いわ」
「せめて事情を説明したって良いんじゃないか?」
「無駄よ。口を開かない相手に時間を浪費する必要は無いわ」
冷めた目で言い放つ赤ずきんに呆れながらも、シルバレットはその場を立ち去った。
それに対し、うずくまっていた女ーートリトマ・ノイモントはようやく自らの足で立ち上がる。
ロベルトは軟禁先でも人形を作っていた。そして、それを探す者が現れた。よりにもよって、人形を敵視している妖精が。
その事実が、彼女を走らせる。父親達の言いつけを破り、ロベルトの軟禁先へ行くために。
馬車での移動が当たり前の令嬢が、手入れのなっていない悪路を駆け上がる。息が上がり、何度も転びながら、それでもトリトマは走った。これ以上、彼にまつわる何もかもを、失わないために。
その様子を、シルバレットは遠巻きに眺めていた。
「あの先かな」
「ええ。何があるのか、住民から聞き出して頂戴。
それにしても、やっぱり人造妖精は少し獣臭いわね」
「そんな臭いしたかなぁ。妖精って鼻が良いんだね」
首を傾げながら、シルバレットは住民の姿を探す。
