人造妖精と行き止まりの夢/メインストーリー

 事は思った以上に深刻だった。

「すでに土木工事や政治にまで影響が出ている地域もあるわ」

 工事計画も新しい政策も、なるほど想像力が要求される。
 それでも国が維持できているのは、
人造妖精の絶対数が人間より遥かに少ないかららしい。

 けれど、人造妖精は確実に数を増やしているという。
 このままでは、
いずれ人類にとって取り返しのつかないダメージとなるかもしれない。

「まだ人造妖精については分からない事も多いの。
仲間達と調査を続けてはいるけど、
人間社会の中で起きている事を、
妖精である私達が把握するのはとても難しいわ」

「待って、その流れってまさか……」

「お願い、手伝って」

 こぼれ落ちそうな程大きな瑠璃色の瞳で、
彼女はこちらを見つめる。

 どうして僕なのか。
 わざわざこんな辺鄙な場所までやって来て。

 いや、逆か。
 人造妖精の影響下に無い、人里離れた場所を、
わざわざ選んでやって来たのだ。

 僕が武器になるものを所有しているのも理由かもしれない。

 ともかく、僕に拒否権は無いようだった。

「一応確認するけど、僕の身の安全は保証してもらえるの?」

「……善処はするわ」

 何で目を逸らすんだ。

 とはいえ。
 自分も熊や狼が生息する森で、
たった一人生き抜いてきた身ではある。

 どうせ誰かがやらなきゃ、人類は終わる。

「分かった。僕は何をすれば良い?」

「良いの? 危ないかもしれないわよ」

「頼んできたのはそっちでしょ。
良いよ。協力する」

「ありがとう。本当に……」

 少女は深々と頭を下げて礼を言った。

 真っ赤なフードを被ったこの妖精は『赤ずきん』と名乗り、
僕もまた自らの名を明かした。

 それからの日々は滝のような勢いで流れていった。

 イエーガーという妖精を紹介され、銃の手解きを受けたが、
身体の大きさが違いすぎてどうにもやりにくい。
 
 だが、人造妖精をの素体を人間が作っている以上、
人間同士の争いで勝つための技術は必要だ。
 人間は日頃僕が相手にしていた獣達よりずっと弱いが、
それを補って余りあるものを作り出す。

 赤ずきんに協力する妖精はイエーガーだけではない。
 各地を飛び回る三兄弟や、彼らが集めた情報を丹念に分析するツイックライン。

 他にも、幾名かの妖精が赤ずきんに賛同し、力を貸してくれている。
 ……なぜか人間は僕しかいないようだが。

 イエーガーとの訓練に加え、人間への聞き込み調査も当然僕が行う。
 さらに、人間にとっての生活必需品は妖精に調達できるものではなく、資金面の問題もあった。

「森より不便だ」
「人間は難儀な生き物っスね〜。
楽をするための文明じゃないんスか〜?」

 気の抜けた声でツイックラインが笑う。
 今ひとつ反論の言葉が浮かばないのは、僕の中に思い当たる事があったということだろうか。

 そのツイックラインの頭脳は、普段の様子と裏腹に聡明だ。
 平地の雪が溶け切った頃、ついに人造妖精が作られていると思しき場所を特定したのである。

 

 

 
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