人造妖精と行き止まりの夢/メインストーリー
家に戻ると、窓辺にあった小さな鉢が床に落ちて割れていた。
テーブルに置いた籠はひっくり返り、
籠に入っていた芋は散り散りに転がっている。
「窓が開いてる……まずい」
施錠を忘れたのか、はたまた誰かがこじ開けたのか。
それは分からないが、とにかくまずい。
僕は急いで猟銃の保管庫を確認した。
「良かった。ちゃんと全部ある」
銃はこの家で最も盗まれてはならない物だ。
命を奪う道具が他人の手に渡らなくて本当に良かった。
銃の扱いは不得手なので滅多に使わないが、こういう場所だ。
追い払うための威嚇射撃を含め、
こちらの身を守るためにやむを得ない場合もある。
全ての部屋を確認したが、人間も動物もいなかった。
うっかり施錠を忘れ、風が吹き込んだのだろう。
己の不注意を反省しながら、僕は散らかった部屋を片付ける。
「……は?」
ひっくり返った籠を持ち上げると、
そこにはリスよりも小さな少女が立っていた。
「まさか、妖精? 街で噂の?」
「……あんな紛い物と一緒にしないで。
私は本物だもの」
喋った。どうやら言葉が通じるらしい。
「ええと、紛い物って? というか、どうして僕の家に?
妖精って心が綺麗な人にしか見えないんじゃないの?」
「質問が多いわね。
良い? 街で目撃されている妖精は偽物なの。
私は人造妖精と呼んでいるけど、
あれは本来ただの人形なのよ」
「人形? 人造妖精ってことは、
人間が作ったってことかな」
「そ。妖精を模した人形に、
オリジナルである妖精の思念を分割して、
宿らせているの」
……頭がこんがらがってきた。
思念って分割できるものだったかな。
「よく分からないけど、
そんな事をしてオリジナルの妖精とやらは大丈夫なの?」
「死にはしないという意味では大丈夫よ。
ただ、ずっと眠っているはずだから、
死んでいるのと変わらないとも言えるわね」
気の強そうな態度から一変、悲しげな表情をする妖精の少女。
オリジナルの妖精というのが、
彼女の友人か家族なのだろうと察せられた。
「人造妖精達はね、人間の想像を食べるの」
「想像を食べる? 夢食いのような感じかな」
確か、人の夢を食べると伝承される動物がいたはずだ。
それに近いものだろうかと感じた。
「理解が早いのね。ええ。似たようなものよ。
人間が何か思い浮かべると、それを食べてしまうの」
「それで本物と違って目撃者が多いんだね。
餌を食べるために人間の近くに行くから。
人間の想像なんて際限が無いし、効率良いな」
「何を呑気に感心しているの。
想像した事を食べられるって事は、
想像をきっかけに起こるはずだった事も、
全部無くなるって事なのよ?」
「それって……」
合点がいった。
布を染めたり、食器に絵付けをしたり、
それらは全て想像というプロセスを踏む。
何を作るか想像し、食われ、何も作れない。
それがあの、空の商品棚の原因になっていたのである。
テーブルに置いた籠はひっくり返り、
籠に入っていた芋は散り散りに転がっている。
「窓が開いてる……まずい」
施錠を忘れたのか、はたまた誰かがこじ開けたのか。
それは分からないが、とにかくまずい。
僕は急いで猟銃の保管庫を確認した。
「良かった。ちゃんと全部ある」
銃はこの家で最も盗まれてはならない物だ。
命を奪う道具が他人の手に渡らなくて本当に良かった。
銃の扱いは不得手なので滅多に使わないが、こういう場所だ。
追い払うための威嚇射撃を含め、
こちらの身を守るためにやむを得ない場合もある。
全ての部屋を確認したが、人間も動物もいなかった。
うっかり施錠を忘れ、風が吹き込んだのだろう。
己の不注意を反省しながら、僕は散らかった部屋を片付ける。
「……は?」
ひっくり返った籠を持ち上げると、
そこにはリスよりも小さな少女が立っていた。
「まさか、妖精? 街で噂の?」
「……あんな紛い物と一緒にしないで。
私は本物だもの」
喋った。どうやら言葉が通じるらしい。
「ええと、紛い物って? というか、どうして僕の家に?
妖精って心が綺麗な人にしか見えないんじゃないの?」
「質問が多いわね。
良い? 街で目撃されている妖精は偽物なの。
私は人造妖精と呼んでいるけど、
あれは本来ただの人形なのよ」
「人形? 人造妖精ってことは、
人間が作ったってことかな」
「そ。妖精を模した人形に、
オリジナルである妖精の思念を分割して、
宿らせているの」
……頭がこんがらがってきた。
思念って分割できるものだったかな。
「よく分からないけど、
そんな事をしてオリジナルの妖精とやらは大丈夫なの?」
「死にはしないという意味では大丈夫よ。
ただ、ずっと眠っているはずだから、
死んでいるのと変わらないとも言えるわね」
気の強そうな態度から一変、悲しげな表情をする妖精の少女。
オリジナルの妖精というのが、
彼女の友人か家族なのだろうと察せられた。
「人造妖精達はね、人間の想像を食べるの」
「想像を食べる? 夢食いのような感じかな」
確か、人の夢を食べると伝承される動物がいたはずだ。
それに近いものだろうかと感じた。
「理解が早いのね。ええ。似たようなものよ。
人間が何か思い浮かべると、それを食べてしまうの」
「それで本物と違って目撃者が多いんだね。
餌を食べるために人間の近くに行くから。
人間の想像なんて際限が無いし、効率良いな」
「何を呑気に感心しているの。
想像した事を食べられるって事は、
想像をきっかけに起こるはずだった事も、
全部無くなるって事なのよ?」
「それって……」
合点がいった。
布を染めたり、食器に絵付けをしたり、
それらは全て想像というプロセスを踏む。
何を作るか想像し、食われ、何も作れない。
それがあの、空の商品棚の原因になっていたのである。
